写真1●デモでは,動画ストリーム配信時に,別のトラフィックで負荷をかけても帯域保証ができていることや,経路の一部が不通になっても,別経路への数十ミリ秒以内に切り替えられることを示した
写真1●デモでは,動画ストリーム配信時に,別のトラフィックで負荷をかけても帯域保証ができていることや,経路の一部が不通になっても,別経路への数十ミリ秒以内に切り替えられることを示した
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 KDDI研究所と古河電気工業は,2008年10月27日~28日の日程で開催した「MPLS JAPAN 2008」の会場で,世界初となるユーザー拠点までの帯域を保証したVPN経路(MPLS-TEパス)を提供するIP-VPN技術のデモンストレーションを展示した(写真1)。通常は通信事業者のサービス網内で終端するMPLS-TEパスを,ユーザー拠点間のエンド・ツー・エンドで設定できるというもの。信頼性や品質を高めたIP-VPNサービスが提供可能になるとしている。

 デモでは古河電工のルーターに新開発のパス計算機能などを実装して,ユーザー拠点間で利用する都度,MPLS-TEパスを設定できることを示した。ユーザー拠点間をエンド・ツー・エンドのMPLSパスで結ぶことで,網内が混雑してもパスに設定した保証帯域を確保でき,経路上に障害が生じても数十ミリ秒単位でバックアップ経路に切り替えられる。ユーザー機器から経路設定の指示ができるため,利用の都度,ネットワークを使うオンデマンド型のVPNが実現可能だ。

 仕組みは,通信事業者網側の収容ルーター(エッジルーター)にパス計算サーバー機能,ユーザー拠点側のルーターにバス計算クライアント機能を搭載し,ユーザー拠点から通信事業者の網に対してMPLS-TEパスの帯域と経路を予約できるようにするというもの。パス計算機能を通信事業者の網側に持たせることで,ユーザー側のMPLSルーターは安価に開発できるという。商用化の際には数万円程度のユーザー側ルーターに同機能を搭載することを想定している。これまでもユーザー拠点までMPLSパスを提供する通信サービスはあったが,インターネット接続事業者(ISP)間の相互接続などに使うものであり,高価なルーターを用意する必要があった。

 KDDI研究所は今回の技術を実現するために,新たにユーザー側のルーターからエッジルーターに帯域予約や,パス計算を指示するためのプロトコルを考案。IETF(internet engineering task force)などの標準化団体に同プロトコルの標準化を提案しており,2009年にも今回の要素技術が国際仕様として認められる見通しだとしている。今後は,サービス利用に必要な機能だけを持たせた低価格のユーザー側ルーターの開発などを進め,KDDIの企業向け通信サービスとして実用化を目指す。