ソフトバンクは2008年10月29日,2008年度上半期の決算を発表した。売上高は前年同期比約3%減の1兆3289億円,営業利益は同約7%増の1800億円の減収増益だった。減収の原因は携帯電話端末の販売が減少したため。増益の要因は携帯電話事業以外の事業が好調だったのに加えて,携帯電話端末の販売減少によって営業費用が減ったことによる。

投資家の不安を解消するため,業績予想や返済スケジュールを開示

写真1●ソフトバンクの孫正義社長
写真1●ソフトバンクの孫正義社長
[画像のクリックで拡大表示]
 世界的な金融不安などを受けて,同社の株価は前日までに大幅に下落した。決算説明の席上に立った同社の孫正義社長(写真1)は,「ソフトバンクの先行きを不安視する声が集まっていた。これも我々が業績予想を出していなかったり,ボーダフォン買収に伴う1兆円を超える借入金の返済スケジュールを開示していなかったりしたことで不安が広まった」と説明。投資家の不安を解消するために,当初11月5日に予定していた決算発表日を前倒ししたほか,この7~8年間公表していなかった業績予想を開示した。さらには借入金の返済スケジュールについての説明に多くの時間を費やした。

写真2●業績予想を7~8年ぶりに開示
写真2●業績予想を7~8年ぶりに開示
[画像のクリックで拡大表示]
 まず業績予想として,2008年度通期の営業利益は3400億円,2009年度は4200億円と増益を見込む予想を示した(写真2)。さらに営業活動によるキャッシュ・フローと,主に設備投資を表す投資活動によるキャッシュ・フローを合計したフリー・キャッシュ・フローとして,2007年度の実績が1642億円のマイナスだったのが,2008年度の予想として1400億円のプラスに。2009年度の予想として2500億円のプラスと,大幅に改善していく見込みを明らかにした。その理由として,割賦販売制度を投入して2年が経過したことから各ユーザーに対して値引きする割合が減り,ARPUが下げ止まる傾向にあることなどを上げた。

写真3●ボーダフォン買収に伴う借入金の返済も順調に推移すると説明
写真3●ボーダフォン買収に伴う借入金の返済も順調に推移すると説明
[画像のクリックで拡大表示]
 ボーダフォン買収に伴う1兆4000億円にのぼる借入金の返済残高についても,フリー・キャッシュ・フローなどを元手に順調に返済できると説明。「金融機関と約束したミニマムの返済スケジュールを大幅に前倒して返済できる。10年たたずして借り入れ総額はゼロになり,黒字化できるのではないか。(同社の財務の健全性について)市場の理解が進むのは時間の問題」(孫社長,写真3)と語った。

特別損失を計上する可能性も

 一方で金融環境の悪化によって,最大750億円の特別損失を計上する可能性があることも明らかにした。特別損失を計上する可能性があるのは旧ボーダフォンジャパンが発行した公募社債に伴う,750億円の債務担保証券。160銘柄によって構成しているが,既に6つの銘柄が債務不履行(デフォルト)に陥っているという。7銘柄が債務不履行になれば約456億円,8銘柄以上になれば約750億円の特別損失が発生する。特別損失が発生した場合,ソフトバンクモバイルに計上することになる。

[発表資料へ(決算短信,PDFファイル)]
[発表資料へ(業績予想)]