写真●Webブラウザ版Excelの画面
写真●Webブラウザ版Excelの画面
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 米マイクロソフトは2008年10月28日(米国時間)、次期Officeである「Office 14(開発コード名)をWebブラウザ内で動作可能にすると発表した(関連記事:[PDC 2008]Microsoft,次期「Office」はWebアプリ版「Word/Excel/PowerPoint/OneNote」も提供)。グーグルの無料Webオフィス「Google Document」などに対抗する。パソコンソフトのライセンス販売という同社のビジネスモデルは、大きな転換点を迎える。

 「顧客の要望は変化している。デスクトップというアイデア自体が、パソコン中心の概念から携帯電話やWebブラウザまで含めたものに変わりつつある」。マイクロソフトでOffice製品事業を統括するクリス・カポセラ上級副社長は、Webブラウザ版Office提供の背景をこう説明する。

 Webブラウザ版Officeの提供は「マルチスクリーン戦略の一環」(チーフ・ソフトウエア・アーキテクトのレイ・オジー氏)。パソコンのデスクトップ、Webブラウザ、スマートフォンの各Office間で、ファイルを共有したり共同編集したりできるようにする。

 PDCの基調講演では、異なる機器間で同じファイルを共同編集するデモを披露した(写真)。片方の利用者がデスクトップ版のファイルを編集すると、もう片方の利用者のWebブラウザ版に変更内容が即座に反映された。たとえば、地図のイメージを文書に貼り付けると、もう片方の利用者がWebブラウザ上で開いている文書にも数秒で同じ内容が表示される。従来もWebブラウザ上でOfficeファイルを閲覧すること事態は可能だったが、インターネットを介したこうした密接な連携はできなかった。

 マイクロソフトが次期OfficeにWebブラウザ版を用意することは、同社のビジネスモデルにとって大きな転換点であることを意味する。Officeを含むビジネス事業部の2008年度の営業利益は約124億ドル(約1兆2400億円)。Windowsに次いで、同社の営業利益の半分を稼ぎ出す。これを一部とは言え、無料または月払いの定額で提供することにしたわけだ。グーグルに代表される無料Webアプリケーションの波に、ソフトウエア企業の代表選手であるマイクロソフトも抗しきれなかった。