写真●長谷島眞時 業務執行役員SVP
写真●長谷島眞時 業務執行役員SVP
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 「IS部員よ大志を抱け」。ソニーのCIO(最高情報責任者)を務める長谷島眞時 業務執行役員SVPは2008年10月27日、東京・台場で開かれた「Symposium/ITxpo 2008」の基調講演に登壇し、こう述べた。

 長谷島CIOがエールを送るのは、「IS(情報システム)部門は企業の中核部門といっても過言ではない」と考えているからだ。「商品・サービスの開発力が“表”の競争力だとすると、業務オペレーションの最適化やリスクマネジメントといった“裏”の競争力を支えるのが情報システム部門だ」(長谷島CIO)。

 重責を担う部門にもかかわらず、長谷島CIOが2004年9月にCIOに就任した当時は、経営トップの期待に応えきれていなかった。「システムは個別最適に陥り、外部ベンダーへの依存度が増し、情報システム部員の求心力は低下していた」(同)。日系グローバル企業の代表格であり、連結売上高が9兆円に迫るソニーでさえ、4年前は情報システム部門に多数の問題を抱えていたのである。

 長谷島CIOは就任早々、情報システム部門の改革に挑んだ。まず経営トップに「情報システム構造改革を遂行する」と宣言。「主体性を回復する」ところから着手した。誰かに頼まれてから動くのでなく、情報システム部門が積極的に行動するということである。

 例えば、システムのあるべき姿をEA(エンタープライズ・アーキテクチャ)として定め、テレビやビデオなど製品別に構築していたシステムをSCM(サプライ・チェーン・マネジメント)や販売といった機能別に作り直すなどの提案をまとめた。外注比率が高かった保守・運用の仕事を「ビジネスに寄与する戦略的な工程」(同)とみなしインソースの比率を高めた。中国やインドに自前の開発拠点を設け、業務・設計ノウハウが社内に蓄積する仕組みも整備した。

「情報システム部門はどうあるべきか」、自ら海外を回り部員と討論

 並行して、ソニーの情報システム部門はどうあるべきかという議論を重ねた。長谷島CIOが自ら、海外を含め20拠点以上を訪れ、合計500人以上の情報システム部員と討論した。何を議題にしてもいい、すべての質問に長谷島CIOが答えるというルールで、車座になって話し合った。

 一連の取り組みが奏功し、プロジェクトにおけるコストと納期の遵守率が高まるなどの成果が表れた。ただし長谷島CIOは「マイナスだったのがゼロかプラスまで戻ったに過ぎない」と気を引き締める。今後はグローバルでのデータセンターやネットワークの統合、システムの最適化、リソースの共用、コスト競争力および変化への対応力の強化を目指す。

 情報システム部門の主体性をさらに高めていくために、長谷島CIOは「同時多発チャレンジ」と「ストップ・ザ・先送り」という二つのキーワードを掲げた。何事もできないと言わず複数の挑戦を並行する、後回しにせずにすぐ手を打つ、という意味である。