写真●Ericsson 北東アジアCTOの藤岡雅宣氏
写真●Ericsson 北東アジアCTOの藤岡雅宣氏
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 「将来は,固定テレビと携帯電話のTVが融合する」--。スウェーデンのEricsson 北東アジアCTOの藤岡雅宣氏(写真)は,IMS(IP Multimedia Subsystem)によりIPTVとモバイルTVが融合したTVサービスが実現するとプレスセミナーで述べた。このセミナーは,日本エリクソンがIPTVやモバイルTVなどの動向をテーマとして2008年10月27日に開催した。そのなかでIMSによって実現される次世代TVサービスの具体例とその課題についても,デモを交えながら紹介した。

 IMSは,SIP(Session Initiation Protocol)というIP電話などで使われる通信プロトコルをベースに,固定電話や携帯電話などの異なる通信サービスを統合するシステムである。

 IMSを採用することで,たとえば「IPTVの受信端末に録画してある番組を,会社のPCや携帯電話機で視聴するサービス」が可能になる。同社はこれを実現するために「HIGA(Home IMS Gateway)」を開発した。HIGAは家庭にある機器をIMSネットワークにアクセスできるようにするソリューションで,IPTV端末やミュージック・プレーヤーなどの機器を接続する。HIGAを介して,携帯電話や自宅外のPCからIPTV受信端末にアクセスできる。このサービスは日本ではまだ始まっていない。「サービスの仕組みは出来上がっている。あとは通信事業者などプレーヤーの参入を待つだけ」(藤岡氏)。

 また,同社の「RCS(Rich Communication Suite)」を利用して「携帯電話からのメールをIPTV端末で受信するサービス」や「IPTV上でチャットができるサービス」が可能になるという。RCSは,IMS上で,チャットやファイル転送を,既存のIP電話や携帯電話のサービスにスムーズに組み込むためのシステムだ。

 このサービスを実現するためには「IPTVサービスの標準化が不可欠だ」(同氏)という。現在,IPTVの標準化は,日本の規格である「日本IPTVフォーラム」と,グローバルの規格である「Open IPTV Forum」で,別々に進行している。「エリクソンは,日本IPTVフォーラムとOpen IPTV Forumの協調していくことを望む」(同氏)。

新しいTVサービスに向けた製品も披露

 同社はセミナーで,新しいTVサービスに関連する製品をいくつか紹介した。IPTVプラットフォーム「IPTV Middleware」は,IPTVで“放映中の番組を巻き戻す”機能を備える。「MSDP(Mobile Service Delivery Platform)」は,モバイルTVのコンテンツを個人向けにカスタマイズできる環境を提供する移動体通信事業者向けの製品だ。MSDPは,ユーザーのアクセス解析結果を基にした広告配信や,アンケートの回答や抽選の応募ができる機能も提供する。IPTV Middleware,MSDPを利用したサービスは,すでに日本でも始まっている。

 「Me-On-TV」は,まだ日本で始まっていないサービスだ。Me-On-TVを利用すれば,放送中のTV画面に携帯端末からの情報を組み込める。エンドユーザーが携帯端末を使って参加できる新しいオンライン・サービスである。たとえば,サッカー中継の画面の一部に,一般視聴者の解説コーナーを挿入するようなサービスが実現するという。

 最後に同氏は,IPTVの加入件数が100万以下である日本の状況について,コンテンツが限られていることや,地域ごとに放映権が必要なことなどが普及の障害になっていると指摘した。また,2008年12月1日にスタートする「NHKオンデマンド(NHKの番組をインターネット上で有料配信するサービス)」に言及し,「NHKオンデマンドが日本のIPTVの普及を加速させる可能性もある」と期待を示した。