デジタルラジオ推進協会(DRP)は2008年10月21日,デジタルラジオ・シンポジウムを開催した。この中で,来賓として挨拶した総務省の吉田眞人・放送政策課長は,制度整備の進捗状況などを報告した。
 総務省は,2008年7月に公表された「携帯端末向けマルチメディア放送サービス等の在り方に関する懇談会報告書」に基づいて,実用化の準備を進めている。同報告書では,デジタルラジオ放送について,VHF帯のローバンドを利用して「地方ブロック向けデジタルラジオ放送」として実用化を図るといった内容に加えて,「ハード・ソフトの分離」の方向性を打ち出している。吉田課長は,ハード・ソフト分離に向けた手法として,「委託・受託放送制度」あるいは「電気通信役務利用放送」の活用があるとした。そのうえで,委託・受託放送は,現在の法制度では衛星放送に限られており,地上波放送に活用するためには法改正が必要になるという。一方,電気通信役務利用放送の場合は,法改正は不要で実現できるが,「各種の規律をどう適用するのかが課題で,場合によっては法改正が必要になる」と説明した。
 2011年7月以降の実用化を想定した場合,法改正が必要な場合は次期通常国会に改正案を提出する必要があるという。このため,年内にどうするか決断するという考えを示した。吉田課長は,できるだけ民間の創意工夫が新しい放送で実現できるようにしたいという基本的な考えを示したうえで,「いったん法律が成立すると,改正や修正は大変な労力が必要になる。意見や要望はできるだけ伝えてほしい」と,シンポジウムに参加した業界関係者に訴えた。
<提案方式の概要も説明>
 今回のシンポジウムでは,NHKの関係者から,VHF帯ローバンドの利用に向けた提案方式の考え方が示された。現在総務省で提案方式の募集を行っており,これに向けたものである。基本はISDB-Tsbをベースに,最大14セグメントまで連結できるものとする。さらにはダウンロード方式を組み合わせたものになるという。1セグメント内で30フレーム/秒の動画表示や,5.1chサラウンドの実現も可能になるとした。NHKは民放関係者などと相談のうえで,共同提案していきたい考えである。