写真1●ノークリサーチの岩上 由高氏
写真1●ノークリサーチの岩上 由高氏
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写真2●「Adobe AIRの基本と実践」(日経BP社発行)
写真2●「Adobe AIRの基本と実践」(日経BP社発行)
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写真3●Adobe AIRの構造
写真3●Adobe AIRの構造
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 デスクトップ・アプリケーションとWebアプリケーションの“いいとこどり”が手軽に実現できる「Adobe AIR」を使ってみましょう――。2008年10月17日,ITpro EXPO 2008 Autumn展示会場内のメインシアターで,ノークリサーチの岩上 由高氏は著者によるミニトーク「ブラウザの限界を超えるRIAの新しいカタチ」と題して講演した(写真1)。同氏は,「Adobe AIRの基本と実践」の著者である(写真2)。

 RIAはRich Internet Applicationの略で,従来のHTMLだけの静的なコンテンツではなく,Flashなどを使った動きのあるコンテンツを提供するアプリケーションである。RIAを実現する技術にはいくつかあるが,そのなかでも,アドビ システムズが開発,提供するAdobe AIRが注目されているという。従来のブラウザの枠を超えたRIAが展開できるからだ。

 岩上氏の講演では,まず従来のFlashやAjaxを使ったブラウザ上のRIAには難点があると説明。「FirefoxやInternet Explorerなどブラウザの種類によって動きが異なる。場合によっては,コードを書き換える必要が出てくる」(同氏)。また,ネットワークに接続していないとアプリケーションが使えない点や,セキュリティ上の問題などからローカルへのアクセスに制限がある点も指摘する。

 RIAでは今後,「デスクトップとの親和性が重視される」と岩上氏は見る。つまり,WordやExcelのような操作性が求められるという考えである。「主戦場はデスクトップになる」(同)。

 デスクトップRIAは,デスクトップ・アプリケーションとWebアプリケーションの利点を併せ持つ。デスクトップ・アプリケーションは,ネットワークに接続しなくても利用できるが,各アプリのインストールが必要になったり,アプリが動作するOSによって開発言語やツールに制限がある。一方,ブラウザで利用するWebアプリケーションはPHPなどの開発言語に制限はないが,ブラウザの互換性の問題があり,そもそもネットワークがないと使えない。デスクトップRIAであるAdobe AIRでは,クライアントにソフトウエアをインストールする手間が不要で,オフラインでも利用できる。

従来の開発言語などが使える

 AIRの実態は,FlashPlayerとWebブラウザ(WebKit)が実装されたモジュールである(写真3)。「MXML+ActionScript」や「HTML+JavaScript」が実行でき,これらの連携やPDFファイルのコントロールも可能である。

 「AIR内にデータベースを備えることも大きなメリット」(岩上氏)という。たとえば,1週間単位や1カ月単位で,スケジュール情報をクライアントにダウンロードしておき,そのスケジュールによってクライアントからサーバーにアクセスさせることが可能である。つまり,クライアントからサーバーに,新しい情報があるかどうかをチェックするためのアクセスを省ける。

 岩上氏は,Adobe AIRのもうひとつの利点として,従来の開発言語が使える点を挙げる。AjaxやAdobe Flex,Flashなどをそのまま活用できるツールが用意されている。そのツールも無料あるいは安価であるという。「簡単に試せるAdobe AIR。触ってみたらいかがでしょう」(岩上氏)と講演をしめくくった。