日本仮想化技術 代表取締役社長兼CEO 宮原徹氏
日本仮想化技術 代表取締役社長兼CEO 宮原徹氏
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代表的な仮想マシン・ソフトウエアであるVMware,Xen,Hyper-Vの比較表
代表的な仮想マシン・ソフトウエアであるVMware,Xen,Hyper-Vの比較表
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Citrix XenServer 5.0上でのSPECwab2005ベンチマーク結果。同一仮想マシンでデータベースをシミュレートするBESIM(Backend Simulator)が動作している
Citrix XenServer 5.0上でのSPECwab2005ベンチマーク結果。同一仮想マシンでデータベースをシミュレートするBESIM(Backend Simulator)が動作している
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 「VMware ESX Serverは実績が多いが高価,Xenは注目されているがLinuxの知識が必要,Hyper-VはWindows標準だが検証と実績が課題」---2008年10月17日,ITpro EXPO 2008 Autumnのフォーラム「仮想化Special」の基調講演で,日本仮想化技術 代表取締役社長兼CEO 宮原徹氏は「仮想化技術の最新動向」と題し講演した。

 日本仮想化技術は仮想化技術を専門とする「ベンダー中立な独立系企業」(宮原氏)。オープンソース技術者教育を業務とするびぎねっとの兄弟会社として設立された。Xenのソースコードに貢献したこともある伊藤宏通氏がCTOを務める。

 宮原氏は最近の注目すべき動向として,MicrosoftによるHyper-Vの正式リリースとSymantecによるVMware ESXiの無償化をあげる。Hyper-VはWindows 2008の標準機能として提供され,従来のVirtual Serverから大幅に機能が向上している。ただしクイック・マイグレーションの停止時間が数秒から数十秒を要するなど,機能的にはまだこれからのところもあると宮原氏は指摘する。VMware ESXiはVMware ESX Serverと同じVMkernelを採用したハイパーバイザー型仮想マシン実行環境だが,サービスコンソールやVMotion,VMware HAが使用できないなどの制限事項もある。

 宮原氏はVMware,Xen,Hyper-Vの3製品の比較を紹介した。VMware ESX Serverは実績が一番多いが,ライセンス料,保守料が高額なことが難点。VMware ESXiは無償で利用できるがサービスコンソールがないことなどから,お試しやスタンドアロンでの利用が主な用途になると見る。

 Xenは現在最も注目されており,カシオ計算機,パイオニアなど本格導入事例が出ている。低コストで,課題だったWindowsのライブマイグレーションがサポートされるなど向上してきている。ただし,UNIXやLinux系の知識が必要なこと,ディストリビューションが多く,互換性が低いこと,定番管理ツールがないことが課題という。

 Hyper-VはWindows Server 2008標準であること,System Centerで統合管理できることなどが強みだ。ただし提供が始まったばかりであり,技術的評価検証と実績作りが課題になると宮原氏は指摘する。

 次に宮原氏は「仮想化すると遅くなる」というイメージが本当かどうかを検証したベンチマーク結果を紹介した。Citrix XenServer 5.0上でゲストOSはRed Hat Enterprise Linux 5 Update2を利用。WebサーバーはApache2.0.5.9である。HP ProLiant BL460c(CPUはXeon E5405 クアッドコア 2GHz,メモリー4Gバイト,ディスクは70GバイトのRAID1+0)でSPECweb2005ベンチマークを実行したところ,同時接続数が300程度では物理マシンと仮想マシンの差はほとんどなかった。「仮想化のオーバーヘッドは思ったより小さい」(宮原氏)。

 PostgreSQL 8.3.3で,データベースのベンチマークを行った評価結果でも,仮想化のオーバーヘッドは極めて小さいという結果が得られた。XenServerのキャッシュの効果か,仮想マシンの性能が物理サーバーを上回る場合もあった。データベースの場合は,特に仮想マシンの数が増えた場合ストレージがボトルネックになると考えられ,ストレージをファイバチャネルのRAID5にすることで性能は大きく向上した。「データベース性能はストレージが命。I/O競合を考えHDD数を増やすことが有効」(宮原氏)。またメモリー量が仮想マシン収容力を大幅に左右すると宮原氏は指摘した。

 また注意すべき点としてライセンスの問題を挙げた。例えばHyper-Vはエディションにより利用できる仮想インスタンスが異なる。またゲストOSのCALはすべてWindows Server 2008 CALが必要。バンドル版(OEM版)ライセンスを移行させることはできない。

 Oracleのプロセッサ・ライセンスは物理CPU数が原則であり,マルチコアCPUの場合1コアを0.5CPUとして計算する。「そのためデュアルコアは勘定が合うが,クアッドコアでは損になる」(宮原氏)。

 仮想化技術の今後の展望として,宮原氏は「CPUのマルチコア化が進むことで,スケールアップとスケールアウトがさらに進展する。I/Oの仮想化支援の進化により,仮想化のボトルネックであるI/O性能が向上する。10G Ethernetが普及することで,IP SANの利用が拡大するだろう」との見通しを示した。