写真●ローソンの常務執行役員 CIO ITステーション ディレクターである横溝陽一氏
写真●ローソンの常務執行役員 CIO ITステーション ディレクターである横溝陽一氏
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 「お客様,加盟店オーナー,従業員 ―― これらすべての人たちから選ばれるローソンを目指している。それを実現するITシステムがローソン3.0だ」。ローソンの常務執行役員 CIO ITステーション ディレクターである横溝陽一氏(写真)は2008年10月17日,「ITpro EXPO 2008 Autumn」の基調講演に立ち,同社が構築している次世代ITシステムを披露。経営・ビジネス戦略でITシステムの果たす役割の重要性について熱弁をふるった。

 同社が「ローソン3.0」と呼ぶコンセプトの下で展開中の次世代ITシステムは,(1)新Loppiの導入,(2)POSレジやストアコンピュータの刷新,(3)情報共有による生産性向上を図るためのコミュニケーション・ツールの導入,(4)ポイントカードに基づくCRMの推進 ―― である。新Loppi導入には,インタフェースの改良によって「お客様にサービスをより良く提供する端末にしたい」(横溝CIO)という狙いがある。また,コミュニケーション・ツールの導入は「本部発信型のインテリジェンス機能を実現するため」(同)である。これらの施策により,従来の現場起点型の情報発信形態を改め,経営本部,店舗担当のスーパーバイザー,加盟店の間での情報共有を実現し,「本部が分析した情報をスーパーバイザーに渡していくことで,“選ばれるローソン”を作る」(同)。

 次世代ITシステムへの投資額は2008年度から7年間で約800億円。実は,当初約1000億円と想定していたところを見直し,約2割も削減している。横溝CIOは,大幅なコスト削減を可能にしたポイントとしてアーキテクチャ,調達方法,運用サービス・レベルの3点を挙げる。「リアルタイムのアーキテクチャを採用することで,ハードやソフトを削減できた。調達では,サーバーやソフトをまとめて買うことでより安く買うことができた。運用サービス面では,過去に契約していた運用のサービス・レベルを見直した」と,横溝CIOは説明する。

 横溝CIOは,経営に果たすITの役割についても言及した。「IT戦略は経営戦略そのものだ。IT戦略なくして新しい経営戦略はない」と強調したうえで,「IT部門は片足を経営課題に,もう片足をITに置いて自ら考えていくべき。我々は経営を変革するようなIT部門を作っていきたい」と意気込む。ITシステムは,まさに経営やビジネスを変革する原動力となる存在なのだ。

 実際,ITシステムが今のローソンのビジネスを支えていると言っても過言ではない。全国8500店舗が24時間365日営業できるようにするためにも,「1日たりともシステムは止められない。万が一止まってしまえば,1日の賠償額は数億円にも達すると言われる」と,横溝CIOは説明する。それだけにIT投資額も大きい。「フランチャイズのロイヤルティ収入3000億円を得るために,本部と店舗を合わせて300億円弱のIT投資をしている」(同)。

 ローソンの経営とビジネスの中で,これだけITの果たす役割の大きさを認識しているからこそ横溝CIOは,CIOの役割は単に情報システム部門のトップにとどまらないと自覚する。「CIOのIはITシステムではない。IはInformation,Intelligence,Innovationを指している。つまり,テクノロジーを使ってイノベーションし,ビジネス変革をリードしていくことこそがCIOの果たすべき役割だ」と訴えた。