写真●ロシアKaspersky LabのCEO(最高経営責任者)であるユージン・カスペルスキー氏
写真●ロシアKaspersky LabのCEO(最高経営責任者)であるユージン・カスペルスキー氏
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 「サイバー犯罪に関与している犯罪者の数は、ワールドワイドで1万人以上。被害総額は1000億ドル以上だと推定している」--。ロシアKaspersky LabのCEO(最高経営責任者)であるユージン・カスペルスキー氏(Eugene Kaspersky、写真)は2008年10月17日、「ITpro EXPO 2008 Autumn」の同社ブースで講演を行い、オンライン・セキュリティの現状を解説した。

 カスペルスキー氏はまず、マルウエア(悪意のあるソフトウエア)を開発したり使ったりしているのは、個人ではなく「オンライン犯罪組織」であると語る。「かつてのマルウエアは、人を驚かせたり、騙したりするだけのものだった。しかし現在、サイバー犯罪は変化しており、より組織的に行われるようになった」(カスペルスキー氏)。

 サイバー犯罪の組織化と行っても、「マフィアやヤクザのような、ボスがいてその下にファミリー(実行部隊)がいるというような組織体ではない」(カスペルスキー氏)。サイバー犯罪は現在、高度に産業化されており「マルウエアを作る人、それを販売する人、マルウエアを使ってデータを盗み出して第三者に販売する人、盗んだデータを悪用して金を盗み出す人、といった具合に、分業化されている」(同)という。

 カスペルスキー氏によれば「もはやサイバー犯罪は産業であり、正規の産業との違いは『税金を払っているか否か』の違いしかない」のだという。サイバー犯罪という産業の規模をワールドワイドで推定すると、「マルウエアを使ってお金を稼ぎ出している人の数で1万人以上、被害総額で1000億ドル以上になるだろう」(同)という。

 サイバー犯罪の産業が巨大化した理由は3つある。「1つ目は、オンライン・バンキングに代表されるように、インターネット上で巨額のお金がやり取りされるようになったこと。2つ目は、マルウエアの作成などが分業化されることによって、誰でも簡単にマルウエアを悪用できるようになったこと。3つ目は、サイバー犯罪はインターネットという国境のない世界で行われており、各国の警察が手出しできなくなっていること」(同)だ。

 このような現状に対処するため、Kaspersky Labでは「ウイルス対策ソフトのベンダーとして、マーケティングなどに費用を費やすのではなく、テクノロジへの投資に注力している」とカスペルスキー氏は語る。「われわれは、世界中でセキュリティ・エキスパートを採用している。日本でも既に2名のエキスパートが、日本独自のセキュリティ脅威を分析している」(カスペルスキー氏)という。

 同社製品の日本における市場シェアはまだ高くないが、「日本と同じように、品質に対するこだわりの強いドイツでは、Kaspersky製品がウイルス対策ソフトのトップ・シェアだ。われわれは日本でも成功できると確信している」(同)と語った。