独立行政法人情報処理推進機構(IPA)は2008年10月17日,「2008年度日本OSS貢献者賞」の受賞者を発表した。PostgreSQL開発メンバーである石井達夫氏,ブートローダGRUBの開発責任者である奥地秀則氏,Firefoxの開発で活躍する中野雅之氏,オープンソースカンファレンス(OSC)を運営する宮原徹氏の4氏が受賞した。

 「日本OSS貢献者賞」は影響力のある開発プロジェクトを創造・運営した開発者やコミュニティの活性化に尽力した人を表彰するもの。2005年度に創設し今年度が第4回目となる。これまでRubyのまつもとゆきひろ氏やSeasarのひがやすを氏らが受賞している。

 SRA OSS日本支社長である石井達夫氏はPostgreSQL本体の開発メンバーとして国際化やクラスタリング・ツールpgpool,ベンチマーク・ツールpgbenchなどを開発,また日本PostgreSQLユーザー会初代理事長としてコミュニティ活動もリードした(関連記事:石井氏の連載)。「オープンソースビジネスにかかわる一方で,現役技術者として開発を継続している姿は,開発者としての一つのロールモデルと言える」(審査委員による受賞理由)。

 びぎねっとCEO兼日本仮想化技術CEOの宮原徹氏は「オープンソースカンファレンス」の企画・運営の中心としてコミュニティの活性化に尽力した。現在オープンソースカンファレンスは東京のほか,北海道,新潟,名古屋,京都,島根,福岡,大分,沖縄と全国で開催され,データベースのコミュニティが集まるOSC.DBも行われている(関連記事:宮原氏インタビュー)。「コミュニティ間の交流を促進し,コミュニティの発展に寄与する活動は大きく評価されている」(受賞理由)。

 フランスNexedi社のCTOである奥地秀則氏は,Linuxの標準ブートローダ(OSを起動するプログラム)GRUBの開発責任者(メンテナ)。GRUB2の設計・開発で中心となっている。「サーバー/デスクトップ/組み込み機器など多様な用途で使用され,新しい起動方式EFI やIA64 アーキテクチャなど多彩なプラットフォームに対応した点は,波及効果が大きく,高く評価されている」(受賞理由)。フランスNexedi社はオープンソースの統合業務システムERP5を開発,公開しており,欧州のある中央銀行で採用されているなど,国際的に活躍している(関連記事:奥地氏講演レポート)。

 Mozilla Japanの中野雅之氏はオープンソースのWebブラウザFirefoxの開発で,日本語入力システム連携の実装や国際化のバグ修正などを行った。「技術的に難しい問題を海外のエンジニアと連携しながら解決する姿は評価に値する。現在,世界中でスムーズにFirefox が利用できているのは,中野氏の功績によるところが大きい」(受賞理由)。

 2008年10月28日に開催される「IPA Forum 2008」のオープンソフトウエア・セッションで授賞式を行う。