アクセンチュア システムインテグレーション&テクノロジー本部パートナーの土屋光司氏
アクセンチュア システムインテグレーション&テクノロジー本部パートナーの土屋光司氏
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「ユニファイド・コミュニケーションの仕組みを準備しても,情報を共有しチーム・メンバーをサポートする企業文化がなければ生産性向上には結びつかない」。2008年10月16日,東京ビッグサイトで開催中のITpro EXPO 2008 Autumnで,アクセンチュア システムインテグレーション&テクノロジー本部パートナーの土屋光司氏は「企業にとっての統合コミュニケーション(UC)の価値」と題して講演した。

 ユニファイド・コミュニケーションとは,IP電話や電子メール,インスタント・メッセンジャーなどのコミュニケーション・ツールを統合したシステム。プレゼンス機能によって,電話中や会議中など相手の状態を把握でき,状況に応じて最適なコミュニケーション手段をとることで生産性向上につながるとされている。企業のグローバル化やテレワーカー(在宅勤務者)の増加,外部企業との協業案件の増加などにより,ユニファイド・コミュニケーションのニーズは高まってきている。

 ユニファイド・コミュニケーションの技術は,すでに実用段階にある。しかし,国内企業でIP電話システムを導入済みのユーザーのうち,ユニファイド・コミュニケーションのためのアプリケーションを積極的に利用しているのは「わずか10%程度」(土屋氏)だという。普及の阻害要因は,技術の複雑さや導入コストの高さもあるが,「導入効果がはっきりしないこと」(同氏)だ。

 「コミュニケーションを効率化すれば生産性が向上するわけではない」と同氏は強調する。そして,業務の生産性向上のために必要なのは「コミュニケーションによる情報共有の効率化」と指摘した。業務プロセスにおいて,工程間やグループ間の情報が共有されることで得られる効果は,分析や調査にかかる工数などで数値化できる。

 ユニファイド・コミュニケーションが,この情報共有という作業を効率化するために使われると考えると,導入効果は明確になる。企業に情報を共有する文化がなければ,ユニファイド・コミュニケーションの導入効果は得られない。

 情報を共有する企業文化を作る具体的なアプローチとして,「情報を発信したスタッフや,共有された情報を使って成果を出したスタッフを評価する制度作り」や「積極的な情報共有を推進するリーダーの育成」を挙げた。

 最後に同氏は,ユニファイド・コミュニケーションの技術的な課題として,「携帯電話との連携」と「社外とのコミュニケーション」の2点を指摘した。現状の携帯電話を使ったコミュニケーションでは,ユニファイド・コミュニケーションの大きなメリットであるプレゼンスが欠落している。また,社外とプレゼンスを共有するには,セキュリティやプライバシーの問題を解決する必要があるという。