写真1●京都産業大学コンピュータ理工学部教授兼SRA先端技術研究所非常勤顧問の青木淳氏
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写真2●SRA先端技術研究所シニア研究員兼京都産業大学客員研究員の浅岡浩子氏
写真2●SRA先端技術研究所シニア研究員兼京都産業大学客員研究員の浅岡浩子氏
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写真3●SRA関西事業部開発部兼京都産業大学客員研究員の澤本依里氏
写真3●SRA関西事業部開発部兼京都産業大学客員研究員の澤本依里氏
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 「どんな開発言語にも『定番本』がある。オブジェクト指向開発言語であるSmalltalkの定番本は1980年代に出たものが最後。最近の処理系に沿った定番本がほしいと思っていたのが,Smalltalkの書籍を書くきっかけになった」。京都産業大学コンピュータ理工学部教授兼SRA先端技術研究所非常勤顧問の青木淳氏は10月16日,ITpro Expo 2008 Autumn内のメインシアターでこう語った(写真1)。

 青木氏は2008年7月に出版された書籍「Smalltalkで学ぶオブジェクト指向プログラミングの本質」(日経BP社刊)の著者の一人。SRA先端技術研究所シニア研究員兼京都産業大学客員研究員の浅岡浩子氏(写真2),SRA関西事業部開発部兼京都産業大学客員研究員の澤本依里氏(写真3)とともに執筆を担当した。今回,青木氏は浅岡氏,澤本氏という共著者であり“愛弟子”でもある二人とともに登壇。書籍を執筆したいきさつや書籍に込めた思い,読みどころなどについて語った。

 青木氏は20数年にわたってSmalltalkを使ってきた超上級者。「Smalltalkの初心者(澤本氏)と中級者(浅岡氏)とともに執筆したことで,間口の広い形の本にまとめられた。定番本として定着できるのではないか」とみる。

 書籍に込めた思いについて,昨年からSmalltalkを学び始めたという澤本氏は「オブジェクト指向は誰でも知っているキーワード。ところが執筆を通してオブジェクト指向が奥深いものだということに気づいた。『オブジェクト指向についてわかっている』と自信を持っている人や,オブジェクト指向をわかっているつもりになっていたりする人に,オブジェクト指向の奥深さをお伝えしたい」と話す。

 Smalltalk歴6~7年という浅岡氏は,「Smalltalkに触れた当初は,敷居が高く,わかりにくいという印象を抱いていた。だが使い続けていくうちに,『オブジェクトにメッセージを与えていくことで,オブジェクトを理想的な状態に変化させていける』というSmalltalkの良さに気がついた。80年代にSmalltalkに触ったことがある人だけでなく,触ったことがない人にも,現在使われている他の開発言語との違いを楽しんで理解してほしい」と語った。

 著者が薦める読みどころについて,青木氏は「はじめに」を挙げる。「オブジェクト指向の特徴として現在広く知られているクラスやインヘリタンスなどは,オブジェクト指向の黎明期にはなかったもの。それらがどのようにして登場したかをまとめたので,ぜひ読んでいただきたい」と語った。

 浅岡氏のお薦めは,3次元のキャラクターを幾何学操作や座標変換で表現する方法を含む「第6章 応用プログラミング」。「文系の人にもわかりやすく読んでいただける」(浅岡氏)。澤本氏は「『本当のMVCモデルとは何か』がわかる」という「第5章 基本プログラミング」の内容を読みどころとして示した。