写真●コカ・コーラウエストホールディングスの中野規浩ビジネスシステムグループ担当マネジャー
写真●コカ・コーラウエストホールディングスの中野規浩ビジネスシステムグループ担当マネジャー
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 「DWHを使った自動販売機向けの販売支援システムにより、自販機への補充回数が10%削減できた」。ラスベガスで開催されている「Teradata PARTNERS 2008」においてコカ・コーラウエストホールディングス(CCWH)の中野規浩ビジネスシステムグループ担当マネジャーはこのように語った。

 コカ・コーラにおいて、各地域で製品の製造・販売を行う企業をボトラーと呼ぶ。「世界的には、1社のボトラーが何カ国かをまとめて見ているケースが多い」(中野マネジャー)。しかし日本は一つの国の中にボトラーが12社あるという特殊な状況だ。CCWHは12社のうちの1社であり、福岡県に本社を構え、大阪、京都など14府県でビジネスを展開している。

 そのような状況にかかわらずCCWHは、ワールドワイドのボトラーの中で売り上げが4位につけている。その大きな原動力となっているのは、中野マネジャーが「これだけの成功はほかの国には類を見ない」と語る自販機でのビジネスである。例えばCCWH傘下で北九州と中国地方を担当するコカ・コーラウエストジャパン(CCWJ)の場合、約10万台の自販機を抱え、自販機からの売り上げは売り上げ全体の51.4%に達するという。

 この自販機ビジネスの効率化は、同社の経営に大きく影響する。そこで2006年に導入したのが冒頭で紹介した販売支援システムだ。ポイントは、「商品の売り切れによる販売機会のロスを防ぐ」と「商品の賞味期限切れを防ぐように売り切る」という一見矛盾する命題を解決するような補充計画の立案だ。

 補充計画のベースとなるのは、各自販機における売り上げ状況のデータだ。一部の自販機はオンラインで状況を吸い上げるが、多くは商品の補充時にデータを集める。新システムでは、そうして集めた過去のデータに加えて、「有名な歌手のコンサートが何日にある」といった売り上げに大きな影響を与える情報も加味して補充計画を立てる。

 従来、自販機への補充はベテラン社員の経験や勘に頼っていた。そのため、新人がすぐに担当することはできない分野だったという。新システム導入後は「営業担当者の80%を入社3年以内の若手が担当するようになった」(中野マネジャー)。それでも冒頭の「補充の回数の10%減」を達成した。

 当然ながら補充回数が減っても、同時に販売機会のロスが増えては仕方ない。この点は、在庫切れの時間がオンラインの自販機で約30%、オフラインの自販機で約9.4%短縮できている。ただしオンラインの自販機では通信コストが高いため「現状では、売り上げが伸びたことによる効果はそれほど出ていない。今後は通信コストを2割ほど削減するのが目標だ」(中野マネジャー)という。