写真●野村総合研究所の椎野孝雄理事
写真●野村総合研究所の椎野孝雄理事
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 「全社の効率化をいかに実現するかを考えることが,二酸化炭素の削減につながる」。

 野村総合研究所(NRI)の椎野孝雄理事は2008年10月14日,都内で開催された「ITpro グリーンITフォーラム 2008 Autumn」で講演し,企業に二酸化炭素削減を迫る動きが一層強まっている現状と,その中でIT部門が果たすべき役割について述べた(写真)。

 椎野理事はまず,注目すべき最近の動きを挙げた。2009年4月に施行される「改正省エネルギー法」では,全社レベルの「エネルギー管理統括者」として役員クラスをアサインしなくてはならない。NRIでも,常務クラスの役員を指名したという。「(同法に基づく)報告は2010年6月頃になるが,測定開始は2009年4月からなので今から準備が必要」と述べた。

 次に挙げたのは「カーボンマイナス東京10年プロジェクト」などをはじめ,東京都が急ピッチで進める気候変動対策を紹介。「東京以外の企業は無関係,と思うかも知れないが,ディーゼル規制が東京から全国に広がったことを思い出してほしい」と警告を発した。

 こうした状況でIT部門が果たすべき役割について,椎野理事は「これからは生産性の競争になってくる」と指摘。全社の効率化を追求することが二酸化炭素の削減につながるとした。具体例として,分散コールセンターなどを始めとするテレワークの推進,サプライチェーンの効率化などをしっかり提案していくべきだとした。

自社商品の貢献度も把握せよ

 今後企業が取り組むべき課題として椎野理事が挙げたのは,「自社の製品やサービスが市場に出た後にどれだけ二酸化炭素削減に寄与しているか,つまりGreen by My Companyを把握すること」。そのためには情報武装が必要だと訴えた。「ITU(国際電気通信連合)やグリーンIT推進協議会など,ITの貢献度を評価する基準の策定作業が内外の諸機関で進められている。これらを注視する必要がある」という。

 椎野理事によれば,製造業の多くは以前から環境部門を持ち,環境面の諸施策を統括してきた。だが,これまでこの種の取り組みを経験してこなかったサービス業や金融業のほか,ITへの依存度が高い業種では,IT部門が環境面の施策を統括する立場になる可能性が高い。その際には「外注先の環境対策も把握しておく必要がある」(同)点に注意すべきだという。