写真1●オートデスク マーケティング本部長の土肥渉氏
写真1●オートデスク マーケティング本部長の土肥渉氏
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写真2●米South Carolina大学の施設設計の事例
写真2●米South Carolina大学の施設設計の事例
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 「デザイン検証による最適化でモノ作りにおける環境問題の多くを解決できる」――。2008年10月14日に開催された「グリーンITフォーラム」において,CADソフト最大手のオートデスクが講演。建設・製造における設計手法の進化によって無用な環境負荷を省いた事例を紹介し,会場に詰めかけたITプロフェッショナルにグリーンIT実現のヒントを投げかけた。

 登壇したオートデスク マーケティング本部長の土肥渉氏(写真1)は,「オートデスクのユーザーは設計者やデザイナが中心。情報システム部門の方にとってはなじみがない企業のはず」と前おいたうえで,「デザイン・イノベーション・テクノロジーが実現するサステナビリティ」と題したプレゼンテーションを披露。ITと相似形で語られることが多い建築分野の事例を中心に,3次元モデリングによる環境負荷低減の手法を語った。

 企業におけるサステナビリティとは,環境負荷や社会貢献などさまざまな視点から見た企業の持続可能性(sustainability)のこと。土肥氏はその重要性について,「企業全体でサステナビリティに対応しないとソフトウエア,つまり製品が売れない時代」と指摘。オートデスクはCADソフトによる設計手法の革新とその普及によって建設や製造の環境負荷を下げ,さらに一企業として環境問題の啓蒙や従業員教育に取り組むことでサステナビリティを実現するという。

設計時の最適化で無駄なエネルギーを45%削減

 続いて土肥氏はオートデスクを“てこ”に例え,「設計支援ソフト群による『デザイン・イノベーション・テクノロジ』をユーザーに提供することで『てこの原理』が働く。デザイン力の向上で建設や製造分野における環境問題の多くを解決できる」と宣言。企業のサステナビリティにおけるオートデスクの役割を説明した。

 デザイン・イノベーション・テクノロジの核となるのは「BIM(Building Information Modeling)」と「デジタル・プロトタイプ」という二つの設計手法である。BIMは建築物や機械といった設計対象を周辺環境をも含めた3次元モデルに落とし込む。デジタル・プロトタイプは,BIMで作成したモデルによる事前検証で最適化を進め,実際の試作品の作成頻度を下げる。

 両者の設計手法を組み合わせれば,「3次元CADの中で日光が降り注ぎ気温が変動する」といったシミュレーションを繰り返すことで,環境負荷が最も低い最適解を見つけ出せるようになる。例えば米South Carolina大学の施設の事例(写真2)では,「日照や温度変化を分析して,空調施設や窓の設計を最適化した。その結果,一般的なプロジェクトと比べてエネルギー消費を45%,水の消費を20%削減できた」(土肥氏)という。