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 データセンターの電力消費量は,年々増え続けている。ここで,消費する電力を抑えるためには,IT機器の能力を,可能な限り少ない電力消費でまかなう技術が必要になる。ストレージ・ベンダーの米NetAppは,こうした電力消費の削減を,高いレベルで実現している企業であるという。同社の情報システム部門CTOを務めるDave Robbins氏は2008年10月14日,「グリーンITフォーラム」で講演し,米NetAppの電力消費量削減の取り組みについて語った。

 電力消費効率の良さをアピールする米NetAppにおける情報システムの規模は,以下の通りである。従業員は8300人で,データセンターは全6拠点。サーバー機として,コモディティPCサーバーや大型UNIXサーバーなどを使用。これらの上で,独SAPや米Oracleの業務アプリケーション,米Microsoftのメール・システムなど複数のアプリケーションを動かしている。ストレージ容量は2.5ペタ・バイトを超える。

PUEへの取り組みで2011年時点の電力消費を4分の1に削減可能

 情報システム部門CTOのDave氏は冒頭で,電力消費効率の指針であるPUE(Power Usage Effectiveness,電力利用効率)を説明。PUEとは,冷却や電力供給など,IT機器を運用するために必要なIT機器以外の電力を含めたデータセンター全体の電力消費における,IT機器の電力消費の割合。PUE値は1.0に近付けば近付くほど効率が良い。効率が良い悪いの境界となるベンチマーク値は,現在では2.0(IT機器の電力消費量が,ちょうど2分の1を占める)。

 米国の環境保護庁(EPA)は,その時点での最高技術を採用した場合の達成目標値として,2008年のPUEを1.78,2011年のPUEを1.45に設定しているという。ここで,米NetAppのラック容量の95%は2008年目標のPUE1.78をクリアしており,ラック容量の70%は2011年目標のPUE1.45をクリアしているという。また,現在建設中のデータセンターでは,PUE1.20という予測値を立てている。この1.20という数値は,EPAが示す2011年に達成可能な最大値と同じである。

 PUE値の違いによって,大きく今後の電力消費量が変わる。Dave氏はグラフを見せ,2000年から2006年までの電力消費のトレンドと,今後5年間,2011年までの予想消費量を示した。2006年の電力消費量は,2000年の実績値の2~3倍。5年後の2011年時点での予想値は,PUEが現在の評価値である2.0のまま変わらないと仮定した場合と比べ,2011時点の最高技術を適用した1.45を適用した場合,約4分の1ほどの電力消費量で済む。この時の電力消費量は,2000年時点の電力消費量とさほど変わらない。PUE2.0とPUE1.45の差は,2011年時点で,700万世帯の年間消費量の削減と,自動車1000万台のCO2排出量の削減に匹敵するという。

IT機器の機能とデータセンター施設の両面で電力を削減

 具体的に米NetAppがPUEを低く抑えられている主な理由としてDave氏は,米NetAppのストレージ製品が備える技術の側面と,データセンター設計デザインの側面について触れた。

 まず,米NetAppのストレージ製品が備える技術の多くは,電力消費量の削減に対して効率的に利くという。最も典型的な技術は,重複データを記録しないことでディスク量を削減する重複排除機能,増分データだけをコピーするスナップ・ショット・コピーやクローン・コピー,容量が大きいATAディスク・ドライブの採用,ボリューム容量を仮想化するシン・プロビジョニングなどを挙げた。中でも特に,重複排除機能はデータの95%を削減できるとする。サーバー仮想化環境におけるOSイメージの共通化などに特に有効であるとした。

 次に,米NetAppのデータセンター設計では,データセンター専用のビルを建設したり,冷却機や空調機,UPSといったデータセンターを構成する部品の効率化を図ったり,データセンター内での温度分布を最適化する,といった試みを実施していると説明。Dave氏は,温度分布を最適化する方法として現在主流となっている,排気面と吸気面が向かい合わないようにラックを配置するホットアイル/コールドアイルの構成について触れ,配置上の工夫だけでは排気の一部が吸気へと流れてしまうと指摘。天井を低くしたりビニール・カーテンで密閉するなどして吸気用の領域を隔離するコールド・ルームの採用が有効とした。