IP放送・映像配信市場規模の推移(矢野経済研究所推計)
IP放送・映像配信市場規模の推移(矢野経済研究所推計)
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 矢野経済研究所は2008年10月14日,IP放送と映像配信に関する調査結果を発表した(発表資料)。それによると,2008年度のIP放送の有料サービスの市場は186億円(前年度比24%の増加),映像配信の同市場は455億円(同11%増加)を見込む。合計は641億円で,前年度比では14%の増加となる。

 IP放送市場については,地上デジタル放送対応のサービス売上高の成長が著しいという。2011年のアナログ停波に向けてサービス提供事業者はさらに顧客獲得に力を入れると予測する。RF方式の多チャンネルサービスを中心に,地上デジタル放送の切り替え需要を巻き込む形で今後も順調に成長すると推定している。IP放送市場の市場規模(有料サービス売上高)は,2008年度見込みの186億円から,2012年度には564億円になると予測する。

 映像配信(動画配信・動画共有)の有料サービスについては,テレビや携帯端末向けサービスの売上高が増えているという。特にテレビ向けサービスでは,従来のSDTV(標準画質テレビ)からHDTV(ハイビジョン)対応コンテンツへの需要が高くなる傾向が見られ,顧客単価も上昇傾向にあるとしている。一方のパソコン向けは,依然として無料サービスの利用率が高い傾向を保つと推定されるという。

 映像配信市場の市場規模(有料サービス売上高)は,テレビ向けや携帯電話機向けサービスを中心に成長するものの,全体的な成長率はIP放送市場と比較して緩やかなものになると推定した。2008年度見込みの455億円から,2012年には796億円になると予測する。

<パソコン向け映像配信はプロモーション媒体として今後も有望>
 関連したユーザー動向調査では,パソコンでの映像配信(動画配信・動画共有)サービスを視聴した後の行動に関して「コメント・感想の投稿」について,8割以上が「ノンリアクション」であった。一方で投稿すると回答したユーザ層を媒体別にみると,「自身のブログやホームページ」が最も比率が高く14.5%,次いで「配信サイトのコメント投稿欄(コメント投稿機能)」12.0%,「外部の掲示板など」8.4%であった。

 「関連情報の検索」や「関連商品の購入」については,「関連情報の検索」が48.2%,「関連商品の購入」が21.8%であった。映像配信サービスの視聴者の約50%が関連情報の検索を行っており,約20%が商品購入を行っているという結果である。この調査結果から,CGM(Consumer Generated Media)サービスなどを通して表面化するユーザの行動はほんの一部であり,多くはサイレントマジョリティーであることがわかるとしている。

 有料サービス売上高が伸び悩むパソコン向け映像配信(動画配信・動画共有)サービスであるが,プロモーション媒体としては高く機能していることがうかがえ,今後も非常に有望であると予測する。