写真1●ノーテルネットワークス日本法人社長のレイ・テスク氏
写真1●ノーテルネットワークス日本法人社長のレイ・テスク氏
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写真2●3D技術のプロトタイプ「web.alive」の画面
写真2●3D技術のプロトタイプ「web.alive」の画面
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 カナダに本社を置くノーテルネットワークスは2008年10月8日,日本法人新社長による事業方針説明会を開催した。同社では2008年8月18日に新しくレイ・テスク氏(写真1)が社長に就任し,前社長の平松敏之氏は会長となっている。

 テスク社長は「ノーテルネットワークスが日本市場において目指す変革」として,(1)製品だけでなくソリューションやサービス提供へのシフト,(2)次世代ワイヤレスへの注力,(3)メトロ・イーサネット分野への継続的な投資を挙げた。

 (1)については,「当社は今まで技術に焦点を当て,ハードウエアの性能面の進化に力を入れてきた。しかし,技術が一定のレベルまで成熟した現在では,次第にサービスやソリューションにも手を広げていく必要がある」とする。ハードウエアだけでは他社との差別化が難しくなっているからだ。例として,ネットワークのエネルギー・コストを削減するグリーンITへの取り組み,それからエンタープライズ向けのユニファイド・コミュニケーションやテレプレゼンスのソリューションなどが考えられるという。

 「世界中の異なる場所,異なる時間,異なる言語の人々が,仮想的な空間で一緒に仕事をする機会は今後ますます増えていくだろう」(テスク氏)。そうした仮想的なビジネス環境で業務を効率的にこなすためのサービスを提供していく方針である。マイクロソフトやIBMなどパートナー企業と協業するだけでなく,ノーテルネットワークス側でアプリケーションを開発することも視野に入れているという。

 アプリケーション開発の一例としてテスク氏は,「web.alive」と呼ばれる3D技術のプロトタイプを披露した(写真2)。このデモンストレーションはセカンド・ライフのような3D仮想現実世界の業務アプリケーション版とも言うべきもの。日本,カナダなど世界の各地にちらばった同社スタッフが,仮想世界で自分のアバターを操って仮想ミーティングを開くことができる。音声技術には,同社が8月に買収した米ダイアモンドウエアの技術を使っているという。

 (2)の次世代ワイヤレスは,独ティー・モバイルや米ベライゾン・ワイヤレスと連携して進めているLTE関連機器の開発で,日本市場でも今後,投資を拡大するとしている。一方,モバイルWiMAXに関しては「やはりパートナーと協業して準備を進めている。しかし,大手キャリアを中心として世界的にLTEの開発を加速する動きがある」(テスク氏)と,ワイヤレス分野の主軸はあくまでもLTEに置くことを示唆した。

 (3)のメトロ・イーサネットとは,光ネットワークやキャリア向けイーサネット機器の分野を示す。テスク氏は日本市場において,この分野で大規模な導入実績があり,今後も継続的に投資を続けるとした。ただし,ノーテルネットワークス本社では,2008年9月17日に発表した第3四半期一部業績予想で「2008年度通期の業績見通しを下方修正するとともに,メトロ・イーサネット事業の売却を検討する」としている。そのためメトロ・イーサネット事業の先行きは,本社側での判断によって今後,大きく変わる可能性もある。