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 「3Kといわれるイメージを払拭し、IT業界の魅力を学生にうまく伝えたい」-。リクルート対策のため、さまざまな施策を打ち出そうとしているITサービス企業が増えている。学生に仕事の内容を理解してもらうことで、優秀な人材を獲得するのが狙いだ。

 「学生にはITサービス業界の悪いイメージがついてしまっている。企業向けのサービスが仕事であり、消費者の目に直接触れることがない業界なので、学生に仕事の内容をもっと分かりやすく伝えなければならない」。こう語るのは、NTTデータの寒河江弘信人事部長だ。設立から20周年を迎えたNTTデータは今年、「変える力」というキャッチフレーズを掲げ、イメージチェンジを図ろうとしている。世界で活躍できるようにという思いを込めて、カエル(変える)が水泳や陸上の選手として活躍しているポスターを作成するなど、グループを挙げて改革に乗り出した(写真上)。学生にも新しいNTTデータの姿を示し、従来のイメージから脱却しようとしている。

 このほか、NTTデータの社員が出身大学を訪問するなどして、学生に仕事の楽しさ、やりがいなどを伝えたりしている。シンポジウムも開いて、意見交換も行ったりしているという。「地方の優秀な人材もどんどん発掘していくなど、OBを中心に積極的にPRしていきたい」と話す。

 パッケージ販売を手掛けるネオジャパンは、社外に向けた「リクルートブログ」を設置し、社員の日々の活動を学生向けに発信している(写真下)。2006年9月からスタートしているもので、「写真をたくさん張ったりしてできるだけ見やすく書いている」(担当している管理部の川又みか氏)。業界について全く知らない学生でも、楽しく読める記事にすることを心掛けているという。実際、ブログをきっかけにネオジャパンに入社した社員もいるそうだ。

 2008年7月31日の記事には、育児休暇中の女性社員の赤ちゃんの写真を載せた。これには、女性社員も働きやすい職場であることをアピールしようという考えがある。ブログの発信は、よりたくさんの人のハートをつかむきっかけとして、欠かせない存在になっているようだ。
 
 ベストソリューションは、企業の組織編制を最適にすることを目的としたソフト、「Re SAPIEN」を販売している企業だ。同社の場合、就職を控えた学生向けの会社説明会で、社長の乗浜誠二氏が自ら説明を行うというスタイルを取っている。このほか、Web上で商品を販売したいという学生をサポートしたり、大学サークルで勉強会を開いたりして、直接学生とかかわることで、IT業界の魅力を知ってもらおうという活動を行っている。

 同社の「Re SAPIEN」は、社員の気質をそれぞれ分析することで、企業の組織編制の改善を行うというものである。気質が分かれば、例えば仕事が原因でストレスがたまり、うつ病などになる前に手が打てるようになるという。こうしたソフトの活用も、ITサービス業界のマイナスイメージの打破につながるかもしれない。「IT業界では3Kという言葉が叫ばれているが、それは不本意。悪いイメージを払拭し、IT業界の魅力を伝えなければならない」(乗浜社長)。

 こうした例は今後も増えそうだ。ITサービス企業の人事担当者に聞くと、「まずはIT業界の実態を知ってもらうことが重要になる」と口をそろえる。学生に対して積極的にアピールするには、楽しさだけでなく、厳しさも含めて仕事の内容を正確に伝え、理解してもらうことが大切なのだろう。