総務省の通信プラットフォーム研究会が2008年9月30日,第8回会合を開き,11月に予定する取りまとめに向けた報告書案を提出した。

 通信プラットフォーム研究会は,コンテンツ・ビジネスの多様化や市場活性化などを目的に,2008年2月から月1ペースで会合を開催。これまでの議論では,通信事業者などが持つ認証・課金,位置情報,QoS制御といったプラットフォーム機能と柔軟に連携できる環境を用意することで,多様な業態のプレーヤーが新たなビジネスを展開できる市場創出の施策を検討してきた。

 今回打ち出した報告書案では,多様性を伴った新ビジネス創出のための施策として,多数のフォーラムや研究会を立ち上げることを明記した。具体的には以下の6つの施策を明記した。

  1. モバイルビジネスにおけるポータルや認証・課金の多様化を促進するため,事業者間の話し合いの場として民間主体の「モバイルプラットフォーム協議会(仮称)」を設立。2009年夏までに「コンテンツ配信機能に係る標準運用ガイドライン(仮称)」を策定。
  2. 通信事業者をまたいだコンテンツやアプリケーションの円滑な配信に向けて,端末のAPIなどの互換性向上に向けた検討を3.9G商用サービス開始時期を念頭において協議開始。
  3. 携帯電話事業者を変更してもメールやコンテンツを引き継げるようなモバイル・ポータビリティの実現に向けて研究会を設置。2009年中を目途に検討。
  4. 携帯電話やNGN,インターネットなど様々なネットワークをまたいで共通のIDで認証可能なIDポータビリティ実現に向けて,民間主体の「認証基盤連携フォーラム(仮称)」を設置。2009年度中にロードマップを明確化。
  5. ネットワークをまたいだコンテンツ配信効果の計測のあり方に関する検討「コンテンツ配信フォーラム(仮称)」を開催。
  6. ライフログなどを活用した事業などの展開に関する基本ルールの検討するため研究会などを設置。2009年夏を目途に結論。

委員からはフォーラムの実効性に不安の声

 報告書案の内容は,実際のビジネス展開をイメージしてかなり具体的な内容に踏み込んでいる。しかし,委員からはその実効性に不安の声が相次いだ。総務省は報告書案に記述したフォーラムをあくまで民間主体の話し合いの場としており,行政によるガイドラインのような強制力を持った位置付けではないとしているからだ。例えば,通信事業者とコンンテンツ事業者間で利害対立があった場合も,「電気通信事業法の適用範囲外で,行政が裁くことは想定していない」(総務省)という。

 通信プラットフォーム研究会の議論は,本来であれば民間の事業者の中から自発的に生まれてくるべき話。遅々として進まない状況に総務省が業を煮やし,率先して新事業創出のための場を用意した形と言える。そこには米グーグルや米アップルのようなグローバル・プレーヤが,国境を超えて通信ビジネスに新しい形を持ち込んできていることに対する焦りが見え隠れする。

 研究会の議論を意味のあるものにするには,新規参入事業者を多数呼び込むような魅力的な施策を打ち出す必要がある。この点に関しても,委員の中からは「報告書案は新規参入事業者が飛びついてくるような魅力的な内容に見えない」といった厳しい意見が出た。

 研究会は,今回の議論を踏まえて修正した報告書案を1カ月間の意見募集にかける。その後,11月に取りまとめを行う予定だ。
 
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