写真●米オラクルのチャック・ロズワット製品担当エグゼクティブ・バイスプレジデント
写真●米オラクルのチャック・ロズワット製品担当エグゼクティブ・バイスプレジデント
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 米オラクルが次世代アプリケーション製品と位置づける「Fusion Applications」とは何か?──当初はOracle E-Business Suite(EBS)やPeopleSoft、JD Edwardsをはじめ、米オラクルが買収したパッケージの“良いとこ取り”をした製品で、2008年から投入するとしていた。しかし2007年のカンファレンス「Oracle OpenWorld(OOW)」では新たなCRM(顧客情報管理)ソフトを「Fusion Applications」の第一弾として披露していた。

 2008年9月21~25日にサンフランシスコで開催された今回のOOWでは、アプリケーション製品を(1)Application Unlimited(既存のパッケージ製品)、(2)AIA(Application Integrated Architecture:既存パッケージやシステムをSOAの考え方でつなぐための製品群)、(3)Fusion Applications(次世代製品)という3本柱で構成すると紹介している。しかし、その定義は説明者によって微妙に異なる。当初の「ベスト・オブ・ブリード型」パッケージのニュアンスで語られることもあった。

 Fusion Applicationsは何を指すのか。同社製品を統括するチャック・ロズワット製品担当エグゼクティブ・バイスプレジデントの説明はこうだ。「まずオープンな標準に基づいていること。当社のミドルウエアであるFusion Middlewareを使っているのが前提となる。その上で、従来はできなかったことができる、非常に使い勝手がよい、しかも使っていて面白いといった具合に、これまでの世代の製品とは異なる体験(エクスペリエンス)を与えられることが条件だ」。

 そのような体験をユーザーに与えるためのカギとなるのはBI(ビジネスインテリジェンス)だと、ロズワット氏は強調する。「リアルなデータだけでなく、“もしこのような場合はこうなる”というバーチャルなデータを含め、統合された形で管理・分析し情報をユーザーがアクセスできることが重要になる」(同)。

 この条件を満たすFusion Applicationsは「2007年に登場し、08年からいくつかのモジュールを提供し始めている」とロズワット氏はいう。その一つが同社が「Social CRM」と呼ぶWeb2.0関連の技術を使ったSFA(セールス・フォース・オートメーション)ソフト。今年6月に第一弾として「Sales Prospector」のプレビュー版を発表。社内システムやソーシャル・ネットワークを通じて得られた外部情報を販売予測に生かすのが狙いだ。今回のOOWではキャンペーン活動を支援する「Sales Campaigns」と営業資料作成用の「Sales Library」を発表した。

 これらのSFA製品は「ルック・アンド・フィールも、その裏の仕組みも非常に近代的。まさにFusion Applicationsだ」(同)。ロズワット氏は同様の理由で、同社が7月に発表したEPM(エンタープライズ・パフォーマンス管理)ソフト「Oracle EPM system」もFusion Applicationsの一つとして挙げる。

 ロズワット氏は、こうして姿を現し始めたのがFusion Applicationsの一部にすぎないことを認める。「市場に向けて、完全なスタックの形で製品も出していく。その順番は顧客からの反応をみて、最も優先度が高いものからになる」(同)。同社にはFusion Applicationsとしてリリース予定している非常に長いリストが存在するという。

 ただし、Fusion Applicationsのロードマップは明らかにしない方針だ。「Fusion Applicationsに我々が深くコミットしているのは間違いない。その戦略や方向性を現時点で顧客に示すのは意味がある。Application Unlimitedにより、既存製品について強化を続けることも表明している」(ロズワット氏)としつつ、「いまの時点で将来の機能や日付を言っても、顧客にとってプラスにはならないと考えている。明らかにすぐに展開できることが見えている情報を提供すべきだ。これはFusion Applicationsに限らない」との考えを示した。

 では当初のFusion Applicationsの方針だった「ベスト・オブ・ブリード」のパッケージを作るという点についてはどうか。記者の質問に対するロズワット氏の答えは「既存パッケージとFusion Applicationsの二つの方向で進める」というものだった。前者については「Oracle EBS、PeopleSoft、Siebel、Hyperion、Demantraなど我々の製品はすでにベスト・オブ・ブリードだ。Application Unlimitedでそれぞれをよりよいものにする。一方でFusion Applicationsのほうも充実させていく」(ロズワット氏)。