写真1●米オラクルのチャールズ・フィリップス社長
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写真2●競泳選手のマイケル・フェルプス氏
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写真3●米オラクルのチャック・ロズワット上級副社長
写真3●米オラクルのチャック・ロズワット上級副社長
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 「我々もあなたのようにナンバーワンになりたいんですよ」。米オラクルのチャールズ・フィリップス社長は壇上でこう語った(写真1)。相手は、北京オリンピックで前人未到の8冠を達成した米国の国民的英雄である競泳選手のマイケル・フェルプス氏(写真2)。2008年9月22日(米国時間)に行われたカンファレンス「Oracle OpenWorld(OOW)2008」の基調講演での一コマだ。

 9月21日から25日(同)まで米サンフランシスコで開催されるOOW2008は、参加者数が前年から5%増の4万3000人と空前の規模となる見込みだ。「44カ月に50社を買収した。(ERPベンダーの)ピープルソフト買収前の社員数は4万人だったが、現在は8万5000人。社員の3人に1人が買収した企業の社員だ」(フィリップス社長)。2007年もBEAシステムズを筆頭に9社を買収。これが一層の規模拡大につながった。

 これだけ買収を繰り返した狙いは何か。これから何を目指すのか。フィリップス社長はこれまでの主張をおさらいするとともに、今回のOOWで発表する製品群のさわりを紹介した。

「完全」「オープン」「統合された」

 オラクルの戦略は三つの言葉で表せるとフィリップス社長は主張。「完全(Complete)」「オープン(Open)」「統合された(Integrated)」がそれだ。この三つのキーワードは他のプレゼンテーションでもたびたび登場した。

 同社がまず目指したのは「完全」。「それまで顧客のシステムは複雑で相互運用が不可能で、企業の意思決定を十分に支援できなかった」(フィリップス社長)。意思決定の支援には、システム全体をコントロールできるアーキテクチャが必要になる。そこで同社は「買収や既存製品・技術への投資により、コントロール可能なコンポーネントをそろえることに注力した」(同)。ここでいうコンポーネントとは単なるソフトウエア部品ではなく、データベースやアプリケーションなどシステムを構成する要素を指す。

 一方で「コンポーネント同士がコミュニケーションを図れること」(同)が重要。コンポーネントのラインアップ強化と並行して、Webサービスに関連した技術や標準を使うことで「オープン」で「統合された」形でコンポーネントを利用できる下地を整えた。さらに組織化されたアーキテクチャの下でコンポーネント全体を利用可能にするため、オラクル版のSOA(サービス指向アーキテクチャ)であるAIA(Application Integration Architecture)を提唱した。

 一連の活動により「企業が複雑な問題に取り組むためのシステムを実現できるようになった」とフィリップス社長は振り返る。加えて買収により、「5年前に企業向けソフト分野でリーダーだったのはデータベースとデータ・ウエアハウスだけだったが、現在ではCRM(顧客情報管理)やバンキングなど、多くの分野でリーダーになっている」(同)。同社は各分野でナンバーワンとなることにこだわる。冒頭のフェルプス氏に対する発言もその表れだ。「多くの顧客を獲得し、各分野でリーダーになれば、その分投資がしやすくなる。顧客も投資の再配分を受けやすくなる」(同)。

コラボレーション製品を新たにリリース

 こうした前置きをした上で、製品開発担当のチャック・ロズワット上級副社長(写真3)とともに各分野での取り組みを紹介した。まずシステム統合の要であるAIA関連製品の強化。通信業界でのAIAの成功例を挙げつつ、AIAを実現するための基本機能群である「Foundation Pack」を業界別にも提供していくことを表明。第一弾として保険向けの「Oracle AIA Insurance Foundation Pack」とユーティリティ(公益)業向けの「同Utilities Foundation Pack」を発表した。

 アプリケーション関連ではERP(統合業務システム)パッケージ「Oracle E-Business Suite(EBS)」の新版12.1を発表。「グローバル化を視野に会計部分を書き直した」(ロズワット上級副社長)ほか、サプライチェーン管理や人事管理関連の機能を強化した。

 ミドルウエア系ではコラボレーションを支援する「Oracle Beehive」が目玉の一つ。既存製品の「Oracle Collaboration Suite」の後継製品に当たるもので、「Web2.0関連技術を全面採用し、3年をかけて開発した」(同)。電子メール、音声、チャットなどコミュニケーションの機能を包括して提供する。マイクロソフトのOutlookやExchange Serverと併用できる。

 このほかミドルウエア群「Oracle Fusion Middleware」の新版11g、開発環境「JDeveloper」の新版11gを発表。データベースでは11gのマイナー・バージョンアップについて講演した。

 「誰もやったことのないことをやりたいと考えていた。7歳のころから自分にそれができると言い聞かせてきた」。フェルプス氏はこう語った。フィリップス社長はこれを受けて「我々もスピード社のウエアを着ると勝てるかも」と言い、会場の笑いを誘った。