米Microsoftが3億ドルかけて展開中の広告キャンペーンは2008年9月18日(米国時間),同社共同創設者のBill Gates氏と人気コメディアンのJerry Seinfeld氏を起用した初のテレビ・コマーシャル(CM)に続き,新たな段階に入った。新作CMは「Windows:Life without Walls」(「Windowsで障壁のない生活を」)と「I'm a PC」(「僕はPC」)というテーマを打ち出すことで,米Appleのステレオタイプ的なWindowsパソコン・ユーザー観と直接対決し,Windowsパソコンとそのユーザーの多様性にポイントを絞る。

 新CMの放映は米国時間9月18日の夜に始まった。新聞と雑誌にも同種の広告が掲載される。Appleの嫌みでステレオタイプな比較広告「I'm a Mac, I'm a PC」(「僕はMac。僕はPC」)と一線を画し,Microsoftはライバルを物笑いの対象にしない(ライバルの名前さえ出さない)。ライバルをからかう代わりに,Windowsパソコンを取り巻く環境とWindowsユーザーの豊かさを紹介する。広告には有名人も現れるが,世界中から多くの一般ユーザーと幾人かMicrosoftの社員が登場する(フォント・レンダリング技術「ClearType」の権威,Bill Hilf氏もいたと思う)。

 Appleや「Macintosh」を名指ししていない広告だが,Appleそのものや同社の広告,とりわけやかましいApple/Macのファンに見られる気取った態度を狙い撃ちしようとする意図がはっきり読み取れる。Microsoftのやり方は,Appleよりもはるかに思いやりがあり,謙虚で,人間味にあふれている。

 紙媒体向け広告には,次のように書かれていた。「この話はソフトウエアだけにとどまりません。生活に対する取り組み方の問題です。日々の生活をつつがなく送るのに足りない何かを,技術的に補おうとする取り組みです。現在,世界中で10億人以上の人がWindowsを使っています。つまり,みんなお互いを必要としており,持ちつ持たれつの関係にあるのです」

 Microsoftは新CMでWindowsユーザーに体験談を語らせて,Appleの「漫画じみてステレオタイプな」広告を攻撃する。Microsoftジェネラル・マネージャのDavid Webster氏は「(Appleの作った)お話を消し去りたいとの強い思いを込めた」と述べ,Appleを泥沼に引きずり込むことなく流れを変えられる広告にしたという。同氏の口からは聞けなかったが,これはまさにAppleがこれまで数年間MicrosoftとWindowsに行おうとしてきたことである。

 新CMは,分かりにくくピント外れの内容だったという意見の多い,Gates氏とSeinfeld氏の共演CMに対する批判を鎮めるだろう。ただし,Microsoftは常々これら広告を,いずれ具体的に製品を紹介する一大広告キャンペーンの序章としてきた。広告に対する批判はあるものの(そのほとんどはApple至上主義者によるものだ),広告業界の専門家は大成功と評価している。広告調査会社の米Zeta Interactiveによると,MicrosoftはCMを流し始めてから「劇的に好感度が上がった」という。