「アルゴリズムがわからない人でも,わかりやすく勉強できればいいなと思い製作した」---経済産業省は2008年9月17日,U-20プログラミング・コンテストの入選作品を発表した。団体部門の経済産業大臣表彰には沼津情報専門学校コンピュータ科2年「Team.NIBOSHI」の「Dodge Logic」が選ばれた。フローチャートをつなぎ合わせてキャラクターの行動パターンを作り,戦わせること,で楽しみながらアルゴリズムを学習できるソフトだ。

 個人部門の経済産業大臣表彰には,大阪府立工業高等専門学校 電子情報工学科5年の國領正人さんの電子弦楽器練習支援システム「STrike」,一関工業高等専門学校 電気情報工学科4年 奥田遼介さんの動画ネットワーク再生ソフト「分割再生」,開成高校2年 林拓人さんの「プログラミング言語Cyan」,名古屋工業大学 工学部情報工学科1年 松下浩典さんのアクション・ゲーム「草登り」の4作品が選ばれた。

 U-20プログラミング・コンテストは経済産業省,文部科学省,内閣府,総務省,財務省,国土交通省が共催する「情報化月間」が主催する,20歳以下の学生を対象としたコンテスト。財団法人 日本情報処理開発協会が事務局を務めている。

ハコをつなげてアルゴリズムを作る

 団体部門の経済産業大臣表彰に選ばれた「Dodge Logic」は,動作や条件判断を表す箱をマウスでつなぎあわせてキャラクターの行動をプログラムし,キャラクタ同士を戦わせることでアルゴリズムを学習できる。動作は「前進」「右30度旋回」「特殊技」,条件判断は「前方に敵がいるか?」といった具合だ。

団体部門の経済産業大臣表彰に選ばれた「Dodge Logic」のアルゴリズム設定画面
「Dodge Logic」のバトル画面
団体部門の経済産業大臣表彰に選ばれた「Dodge Logic」のアルゴリズム設定画面(左)とバトル画面(右)
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団体部門の経済産業大臣表彰に選ばれた沼津情報専門学校コンピュータ科2年「Team.NIBOSHI」のプレゼン
団体部門の経済産業大臣表彰に選ばれた沼津情報専門学校コンピュータ科2年「Team.NIBOSHI」のプレゼン
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 開発した沼津情報専門学校コンピュータ科2年の「Team.NIBOSHI」は落合亜佐美さんと新川剛さんの2人。「初めてアルゴリズムを勉強したとき,理解するまでに時間がかかった経験から,アルゴリズムがわからない人でも,わかりやすく勉強できればいいなと思い作った」という。審査委員からは「アイデアと技術のバランスがよくとれた秀作。今後,各地の教育機関で使用してもらえるようにさらにブラッシュアップしてほしい」と期待の声が寄せられた。

“音ゲー”を実際の楽器で

 個人部門の経済産業大臣表彰に選ばれた電子弦楽器練習支援システム「STrike」は,画面に表示される曲のパターンに合わせてギターやバイオリンなどを弾くことで楽器を練習するソフトだ。楽器の音を入力すると音程を認識し,正しく引けたかどうか判定され,得点が計算される。パソコンにライン入力できる弦楽器であれば何でも使用できる。

大阪府立工業高等専門学校 電子情報工学科5年の國領正人さんの電子弦楽器練習支援システム「STrike」
「Strike」を作った大阪府立工業高等専門学校5年の國領正人さん
大阪府立工業高等専門学校 電子情報工学科5年の國領正人さんの電子弦楽器練習支援システム「STrike」(左)と作者の國領正人さん(右)
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 作者の大阪府立工業高等専門学校5年 國領正人さんは「音楽にあわせボタンを叩いたりするいわゆる“音ゲー”を実際の楽器でできれば,楽器が上達するのではないか」と着想したという。「開放4弦の音でリトライなど,練習中は楽器だけでアプリケーション操作を続行できるアイデアは秀逸」(審査講評)。単純なフーリエ変換ではなく,可能性のある音階を絞り込んで音程を判定するなど,音階認識のアルゴリズムも工夫したという。

複数のパソコンに動画を分割表示

 同じく経済産業大臣表彰の「分割再生」は,ネットワークを介して動画を複数のパソコンのモニターに分割して表示できるソフト。「学校の電算室に置いてあるパソコンを眺めていて,これらを使って動画を再生したらきれいだろうなと思った」(作者の一関工業高等専門学校4年 奥田遼介さん)。

一関工業高等専門学校 電気情報工学科4年 奥田遼介さんの動画ネットワーク再生ソフト「分割再生」
「分割再生」を作った一関工業高等専門学校 電気情報工学科4年 奥田遼介さん
一関工業高等専門学校 電気情報工学科4年 奥田遼介さんの動画ネットワーク再生ソフト「分割再生」(左)と作者の奥田遼介さん(右)
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 転送する画像はリアルタイムにjpeg圧縮している。画像を同期して表示させるために,ネットワークが重い場合にはフレームを間引くなど,さまざまな工夫を行っている。審査員は「現時点での実用性は十分」と評価する。最大分割数はネットワークの帯域次第だが,学校では電算室のパソコン64台に画像を分割して表示できたという。