写真●米ヴイエムウェアのパトリック・リン氏
写真●米ヴイエムウェアのパトリック・リン氏
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 2008年9月16日(米国時間)に開幕した「VMworld 2008」の基調講演には、米ヴイエムウェアのポール・マリッツ 最高経営責任者(CEO)が登壇。仮想化をベースにクラウド・コンピューティングを推進するビジョンを明確に示した(関連記事)。これを支える「Virtual Datacenter Operating System(VDC-OS)」は、現行の「Virtual Infrastructure」を機能拡張するもの。代表的な新機能について、同社のプロダクト・マネージメント シニアディレクタのパトリック・リン氏に聞いた(写真)。

(聞き手は森山 徹=日経コンピュータ

「Virtual Infrastructure」の拡張であるのに、なぜVDC-OSと名称に「OS」を入れたのか。

 OSには二つのの役割があると考えている。まず、ハードウエアを抽象化する。その上でアプリケーションにサービスを提供する。単体のサーバーであればWindowsやLinuxといったOSがその役割を担う。沢山のサーバーを集めた巨大なコンピュータに対して同じことを行うのがVDC-OSだ。データセンター全体を抽象化できる。

可用性を向上させる機能として「Fault Tolerance」が加わる。従来の「VMware HA」と何が違うのか。

 Fault Toleranceは、物理サーバーに障害が発生した際に、その上で稼働していた仮想マシンを、別のサーバー上の仮想マシンに切り替える。従来の「VMware HA」を思い浮かべるかもしれないが、Fault Toleranceは障害に備えて、あらかじめ待機系の仮想マシンを稼働させておく。しかも本番の仮想マシンと同期を取っている。これに対してVMware HAは、障害発生時に別のサーバー上で仮想マシンをリスタートさせるだけ。両者では可用性の高さが大きく異なる。

仮想アプライアンス関連で「vApp」と「VMware Studio」が加わる。何が出来るようになるのか。

 vAppは仮想アプライアンスの新しいコンセプトだ。仮想アプライアンスでは、アプリケーションとOSを組み合わせて仮想マシンのイメージを作る。これまでは個別の仮想マシンを意識してきたが、vAppは仮想マシンではなくアプリケーション全体を管理することが目的。例えるなら、vAppはアプリケーションを入れるコンテナだ。コンテナにはバーコードが張ってあって、そのアプリケーションに必要な性能や障害対策レベルを書いておく。こうした仕組みによりVDC-OS上でサービスレベルを満たせる。

 vAppのコンセプトは、私たちが進めるクラウド・コンピューティングを支える。エンタープライズの顧客と話すと「クラウドは面白いが、既存のアプリケーションを書き換えないといけないので対応は難しい」と言う。vAppの作法でアプリケーションのプロパティをコンテナに書いておく。これにより、環境が変わっても、アプリケーションを書き換えずに動かせる。

 VMware Studioは、仮想アプライアンスを作るためのツールだ。仮想マシンにパッチを当てるときなどもこれで管理する。インフラを変えてもアプリケーションを変更しないで済むことが望ましい。VMware Studioはそうしたインフラ作りのベースでもある。

(森山 徹=日経コンピュータ、ラスベガス)