欧州連合(EU)の欧州委員会(EC)はベルギーで現地時間2008年9月15日,ソニーの米国法人Sony Corporation of AmericaによるSony BMG Music Entertainment(Sony BMG)の完全子会社化について承認した。ソニーがSony BMGを100%所有することで,欧州経済地域(EEA)全体あるいはその重要地域における競争を著しく妨害することにはならないと判断したという。

 Sony BMGは,ソニーとドイツのBertelsmannの音楽事業を統合した合弁会社。2004年1月9日にECに設立計画を報告し,同年7月18日にECから承認を得たが,同年12月3日に市場独占を懸念する独立系音楽制作会社の団体Independent Music Publishers and Labels Association(Impala)がECの承認取り消しを申請したことから,2006年7月に欧州第一審裁判所がECの設立承認を無効とする判断を下した(関連記事:「Sony BMGの設立承認は無効」,欧州裁判所の判決)。しかし,その後1年以上にわたってECが調査を行い,2007年10月に,「統合事業による競争の問題はまったく無い」として,あらためてSony BMG設立を承認した(関連記事:欧州委があらためてSony BMG設立を承認,「競争の問題は皆無」)という経緯がある。

 ソニーは今年8月に,Sony BMGを完全子会社化することでBertelsmannと合意したと発表した(Sony Corporation of Americaのプレス・リリース)。Bertelsmannが所有するSony BMGの50%の株式をすべて買い取り,手続完了後に社名をSony BMGから「Sony Music Entertainment(SMEI)」に変更する。

 ECは,ソニーがEEAで他のレコード会社を運営していないことから,EEAの音楽レコード市場における水平的な勢力拡大にはつながらないとの結論に達した。また,アーティストMichael Jackson氏との共同事業Sony/ATV Music Publishingで扱う著作権についても,オンライン音楽販売市場に対する影響を検討したが,多数のオンライン販売業者は他の企業が提供する十分な規模の音楽著作権を利用できると判断した。

 ソニーの民生電子器機事業と音楽事業の連携についてみた場合でも,携帯型音楽プレーヤ,携帯電話,ビデオ・ゲーム機などを手がける競合社には十分な規模の音楽著作権を利用できる手段が残され,ソニーも自社以外の複数のソースから音楽を購入する機会があるので,競争に関する懸念はないとしている。

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