写真:新開発したマルチパス等化装置
写真:新開発したマルチパス等化装置
[画像のクリックで拡大表示]
図1:新しいマルチパス等化装置を使用した地上デジタル放送波の中継イメージ
図1:新しいマルチパス等化装置を使用した地上デジタル放送波の中継イメージ
[画像のクリックで拡大表示]
図2:低遅延マルチパス等化装置を採用した中継局の構成図
図2:低遅延マルチパス等化装置を採用した中継局の構成図
[画像のクリックで拡大表示]

 NHKは2008年9月8日,地上デジタル放送の中継局を低コストで整備できる「低遅延マルチパス等化装置」(写真)を開発したと発表した。NHKは現在,地上デジタル放送の提供エリアを拡大するため,小規模の中継局のデジタル化を進めている。中継局が地上デジタル放送波を正常に受信するためには, 複数の異なる送信所から到達する電波の時間差をガードインターバル(GI)長以下にする必要がある。電波の伝搬路にGI長を超える遅延時間差の大きいマルチパス妨害波が浸入すると,ビット誤りが発生して正しく受信することができなくなる場合があるためだ(発表資料)。

 これまでの「マルチパス等化装置」は信号の処理時間が長いため,電波の時間差をGI長以下にすることができない場合があった。そうなると,放送波で中継することができないため,マイクロ波を使う必要があった。今回開発した装置は信号の処理時間が,従来の8msから17μsに短縮されている。マイクロ波による中継用設備などが不要になるため,大幅なコスト削減につながるという(図1,図2)。NHKは今後,「この装置などを活用して2010年末までに,残り約1800カ所の中継局を整備し,地上デジタル放送の提供エリアを拡大する」としている。