記者が最初にGoogle Chromeを触った時の第一印象は,「速い! 今までよりGmailがサクサク動く」というものだった。グーグルの説明によれば,この速さには「V8」という新しいJavaScriptエンジンが寄与しているという。

 そこで,実際に他のWebブラウザに比べてどの程度JavaScriptの処理が速くなったのか測ってみた。測定に使ったのはThe WebKit Open Source Projectが提供しているJavaScriptのベンチマーク・サイト「SunSpider 0.9」。ちなみに,WebKitはGoogle Chromeのほかに,アップルのSafariでも採用されているオープンソースのHTMLレンダリング・エンジンだ。

 比較対象としたのはFirefox 3.0.1,Internet Explorer(IE) 7,同 8ベータ2,Opera 9.5,Safari 3.1.2である。テストに使ったパソコンはPentium M 1.2GHz,メモリー512MBを搭載した松下電器産業の「Let's note CF-R4」。OSはWindows XP Professional Service Pack 3を利用した。

 結果は図の通り。記者の第一印象通りGoogle Chromeが圧倒的に速かった。Firefox 3.0.1に対しては約1.7倍,Internet Explorer 7に対しては約17倍の差をつけている。

 Webブラウザの高速化に取り組んでいるのはGoogleだけではない。Mozillaでは時期バージョンのFirefox 3.1で「TraceMonkey」と呼ばれる新しいJavaScriptエンジンを採用する予定だ。MozillaのCTOは2008年9月3日,Blogの記事中で開発中のTraceMonkeyとV8とを比較したSunSpiderのベンチマーク・テスト結果を披露した(Mozillaのブレンダン・アイヒCTOのブログ)。これによれば,TraceMonkeyはV8を上回る速度をマークしている。

 Googleのライナス・アプソン エンジニアリングディレクターは,日本でのChromeの記者発表会で,Webブラウザの開発について「競争がより良いWeb環境をもたらす」とコメントしていた。パフォーマンス面でのChromeの圧勝が今後も続くとは限らない。しかし,Chromeの登場によってWebブラウザの開発競争が激しくなり,結果としてより高速なWeb環境がユーザーにもたらされることは間違いなさそうだ。

図●JavaScriptのベンチマーク・サイト
図●JavaScriptのベンチマーク・サイト
「SunSpider 0.9」で各Webブラウザの処理速度をチェック。なお,グラフ中の数値は3回テストを実施した平均値。