博報堂アイ・スタジオ,クリエイティブディレクターの佐野勝彦氏
博報堂アイ・スタジオ,クリエイティブディレクターの佐野勝彦氏
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 2008年9月5日のXDev2008において,博報堂アイ・スタジオ,クリエイティブディレクターの佐野勝彦氏が「テクノロジーを表現へ」と題する講演を行った。講演では佐野氏がこれまでに手がけた,Adobe Flashを活用したインタラクティブWebコンテンツの例を挙げて,制作上の意図や利用した技術などについて自ら説明した。佐野氏はこれまでに,販売促進や企業ブランドの向上を目的とした広告キャンペーンサイトの企画を数多く手がけている。PHPのプログラミングなどの経験もあり,制作現場ではビジュアル作りにとどまらず,「プログラムを表現に生かすこと」(佐野氏)を心がけている。

 2008年3月に立ち上げたアドビシステムズのコミュニティサイト「Adobe EDGE Now Project」では,登録したユーザーが運営するブログから出力されるRSSをクロールし,コンテンツをコミュニティサイトに反映させる技術を活用している点を説明。加えてサイトの公開時期に合わせて登録ユーザーの数を確保するためティザー(期待感を盛り上げるため,商材が正式に公開される以前に展開する導入目的の広告)企画のバイラル(口コミで噂になることを期待したコンテンツ)ムービーを用意した。

 結果的に数百のブロガーを事前に確保できたという。また,ブログに対するランキング機能は,記事の内容をふるいにかけ,情報の質を管理するために重要だと語り,運営上の課題までを視野に入れた企画がクリエイティブにも求められる点を強調した。続いて,2005年に手がけたトヨタの「イスト」キャンペーンサイトでは,ユーザーが操作できるミニカーを画面上に用意。各ユーザーが一斉に動かすミニカーが次第に連携して「組み体操」のような動きを始めるといった,作り手にも予測できないコミュニティサイトの面白さを紹介した。

 さらに,2007年10月に公開した日本郵政のスペシャルコンテンツ「あなたの近くにある会社‐日本郵政」を,技術の向上が表現に影響を与えた例として紹介した。本事例では手書き風の線が画面上で次第に伸びていく表現が特徴的だが,手書きならではのちりちりとした線の揺れはAdobe Flash CS3のActionScript 3.0によってリアルタイムに実現しているという。

 最後に,工場のブランド化という課題に挑戦したシャープの「Kameyama Dream Factory」を紹介し,動きや操作性,ビジュアルデザインの美しさで工場の持つ先進性を表現した点に触れた。同事例ではFlash Playerバージョン8から可能となった動画に対するアルファチャンネル追加機能を活用し,動画と背景画像との合成を演出に取り入れたと語った。