写真●リクルートのメディアテクノロジーラボでチーフアーキテクトを務める川崎有亮氏
写真●リクルートのメディアテクノロジーラボでチーフアーキテクトを務める川崎有亮氏
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 「Webアプリケーションを開発する際には,社内の開発者が利用できるようにシステム設計当初からWebサービスAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)設計を考慮すべき」--。リクルートのメディアテクノロジーラボでチーフアーキテクトを務める川崎有亮氏は,2008年9月4日の「「X-over Development Conference 2008」でこう指摘した。

 リクルートでは現在,社外にWebサービスAPIを公開する予定の無いWebアプリケーションであっても,WebサービスAPIを整備しているという。例えば,同社が2008年6月に公開した「コマーシャル簡単作成サイト」をうたい文句にする「コマーシャライザー」もその1つだ。

 「コマーシャライザー」は,ユーザーがアップロードしたデジカメ写真を,テレビCM風の動画に簡単に編集できるというWebアプリケーションである。コマーシャライザーでは,内部におけるデータ連携などにXMLを使用しており,アプリケーションの各種機能がWebサービスAPIで公開されている。

 川崎氏は「社内向けにWebサービスAPIを整備しておけば,近い将来にアプリケーションを『SaaS(Software as a Service』として公開するのも容易になる。またWebサービスAPIがあれば,社内のオペレータが管理用のHTML(Webページ)を見てアプリケーションを操作するだけでなく,様々な管理の自動化もできるようになる。社内の既存システムと連携して,社内に蓄積されたデータを再活用することも可能だ」と,社内マッシュアップの効用を訴えている。

 川崎氏の所属するリクルートでは現在,レストラン検索サイトの「Hot Pepper.jp」や旅行情報サイト「AB-ROAD」をはじめとする14媒体で,社外のWebサイト/サービスが利用できるWebサービスAPIを公開している。これらのAPIを使うことで例えば,「Hot Pepper.jp」に掲載されているレストランを米Googleの「Google Maps」上に表示するようなWebサービス・アプリケーションが,わずか50行のJavaScriptで構成できる。

 もっとも川崎氏によれば,「リクルートのWebサービスAPIを公開し始めた2年前は,このようなマッシュアップは今ほど容易ではなかった」と語る。「Hot Pepper.jp」と「Google Maps」をマッシュアップするアプリケーションの開発が容易になったのは,リクルートが第三者に対して「リクルート WEBサービス UI Library」と呼ぶJavaScriptのプログラム部品を,2008年3月からBSDライセンスで公開するようになったからだ。

 川崎氏は,「WebサービスAPIを公開する側には,ユーザー・インターフェース(UI)部品のような中間レイヤー的な技術を公開することも求められるようになっている。そうすることで,WebサービスAPIの利用も広がる」とも指摘している。