米Microsoftは2008年8月26日(米国時間),「Windows XP」向け海賊版対策「Windows Genuine Advantage(WGA)Notifications」ソフトウエアの仕様を変更した(関連記事:Windows XPの海賊版チェック,Professional版は目立つ警告表示に変更)。新しいWGA Notificationsは,今後数カ月かけてユーザーのパソコンに配布される。仕様変更の理由について,同社はWindows XP用WGA Notificationsの操作感を「Windows Vista」用に合わせるため,と説明した。ただし,Windows XP用にはWindows Vista用にない機能も追加されている。

 あるMicrosoftの関係者は筆者に対し,「海賊版でなく正規版Windowsを選んで購入してもらうようユーザーを誘導することが,当社の最優先課題」と述べた。「今回の仕様変更によって,WGA Notificationsのインストール作業を簡素化し,常に最新版を使ってもらいやすくする。さらに,警告の効果を高め,Windows XPとWindows Vistaの操作感をそろえる」(同社関係者)

 WGA Notificationsは,ユーザーのWindowsが正規版なのか海賊版らしいか判定するMicrosoftの判定サービスに合格しなかった場合,ユーザーにその旨を警告するソフトウエアだ。警告の方法は,時とともに変わってきた。Windows Vista用WGA Notificationsは,当初Windowsを機能制限モードに移行させていた。このモードに入ると,Internet Explorerだけしか利用できないうえ,1回の起動で1時間しか使えなくなる。ところが,サービス・パック「Service Pack 1(SP1)」でWindows Vista用WGA Notificationsの動作が変わった。機能制限モードに入らず全機能が使える代わりに,警告メッセージが定期的に出る。さらに,ログオンに時間がかかるようになり,デスクトップの背景画像を1時間ごとに黒一色に変わってしまう。

 Microsoftによると,今回の仕様変更でWindows XP用WGA Notificationsの動きはWindows Vista SP1用に近くなるという。正規版と判定されなくても全機能を使い続けられるものの,ログオンに時間がかかり,1時間ごとに警告が表示され,定期的にデスクトップが黒一色に変わるのだ。

 ただし,異なる点もいくつかある。第一に,WGA Notificationsの新しい動きは,Windows XPの「Professional」エディションと同エディション・ベースの「Windows XP Media Center Edition」「Windows XP Tablet PC Edition」でしか見られない。Microsoftによると,これらWindows XPは「最も海賊版が多い」製品で,ほかの2エディションは現在はるかにユーザーが少ないことから,海賊版対策をProfessionalエディションに集中させるそうだ。今もネットブックとともに販売されている「Windows XP Home」は,今回の仕様変更と関係ないらしい。

 二つ目の違いは,正規版でないと判定したWindows XPのデスクトップ右下に,操作の邪魔にならない半透明の警告画像を表示し続ける点だ。画像にはWGAのロゴがあり,「You may be a victim of software counterfeiting. This copy of Windows did not pass genuine Windows validation」(あなたは偽造ソフトウエアの被害に遭われた可能性があります。お使いのWindowsは,当社の正規品検査に合格しませんでした)というメッセージが書かれている。Windows Vista用WGA Notificationsだと,ときおり同じ内容のダイアログ・ボックスを出す程度で,デスクトップに警告画像を表示することはない。

 最も大きな変更は,WGA Notificationsのインストール方法に関するものだと思う。MicrosoftはWindows XPの使用許諾契約書(EULA:End User License Agreement)を改訂し,今後Windows Update(WU)でWGA Notificationsを自動更新するとした。これにより,ユーザーの多くはWGA Notificationsのアップデートを意識しなくなる。つまり,正規版ユーザーとしては,WGAに煩わせられる場面が減るのでメリットといえるだろう。

 さらに注目の点は,Microsoftがこれほど大きな変更をWindows XPに施すことだ。Windows XPはすでに発売から7年が経過し,後継OSのWindows Vistaも2年以上前にリリースした。同社は,2008年になって2回Windows XPの中核部分を大きく変えている。1回目の「Service Pack 3(SP3)」では,様々な変更とともにセットアップ処理を変えた。2回目がWGA Notificationsの仕様変更だ。同社がOSライフサイクルのこれほど終盤になってここまで大々的な変更を行うのは,今回が初めてである。