米Gartnerのアナリストが先ごろ発表した調査結果によると,企業支出の伸びが今後数年後に景気拡大ペースを上回るという。これまで企業は長い間,社内にハードウエア/ソフトウエアを導入して自社で管理するのが一般的だった。ところが状況は大きく変わり,今後こうしたITシステムへの投資はなくなる。企業の支出は,主なITインフラのホスティングと管理が社外で行われるクラウド・コンピューティング・ソリューションに向かうのだ。

 Gartner副社長のJim Tully氏は「企業などは,自前のハードウエア/ソフトウエア資産を持つ形態から,ユーザー単位のサービスを利用する方式へ移行しつつある」と述べる。「予測されているクラウド・コンピューティングへの移行が進むと,一部分野のIT製品は大きく成長するが,そのほかの分野は深刻な事態に陥るだろう。総体的にみれば,IT資産の利用効率が向上するので,クラウド・コンピューティングが市場全体の成長に及ぼす影響はプラスマイナス・ゼロになると見込む。ただし,市場拡大の可能性は相当高いと考える」(Tully氏)

 様々な点で,GartnerはIT業界で何年も前から当たり前とされていた変化にやっと気付いただけだ。クラウド・コンピューティングは実在し,移行が進んでおり,IT市場を一変させるだろう。

 インフラのクラウド・コンピューティング化にともなう懸念の一つは,IT業界の雇用規模が大幅に縮小することである。厳密には,縮小というよりも,IT関連業務の多くが非IT系企業からなくなり,インフラ・サービスを提供するホスティング企業などに移る。雇用状況が変わるとともに,ソフトウエアとソフトウエア・ライセンスの購入に使われていた企業の支出も,サービスへ向かうようになる。

 当然,米Microsoftも自社製品のビジネス・モデルをクラウド・コンピューティングへ変えつつある。間もなくメッセージング・サーバー「Exchange Server」とその他製品の機能をオンライン・サービス方式で提供するのだ。企業向けの移行/相互接続ソリューションも用意し,社内ITインフラで実現しているサービスと同社のホスティング・サービスを混在させて利用できるようにする(関連記事:Microsoft,「ソフトウエア+サービス」戦略の将来に向けてもう一歩前進)。同社はこうしたアプローチを「ソフトウエア+サービス」戦略と呼んでいる。