KPMGビジネスアシュアランス マネージャー 藤江康弘氏
KPMGビジネスアシュアランス マネージャー 藤江康弘氏
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ERM 2008のメインシアターで行われたリスク・マネジメント検定の解説講演
ERM 2008のメインシアターで行われたリスク・マネジメント検定の解説講演
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ERM 2008のリスク・マネジメント検定会場
ERM 2008のリスク・マネジメント検定会場
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 「リスク統括部門の役割は,個別のリスクへの対応ではなく,方向性を示すこと」---。KPMGビジネスアシュアランス マネージャー 藤江康弘氏は8月22日,東京ビッグサイトで開催された「エンタープライズ・リスク・マネジメント(ERM) 2008」の講演「リスク・マネジメント検定解説」でこう述べた。

 リスク・マネジメント検定は,ERM 2008の一環として実施した,リスク・マネジメントの基本的な考え方や実務に関する理解度をチェックできる企画。イベント会期に先行してオープンした検定サイトでの受験者と,ERM 2008の会場での受験者を合わせて,8月22日までに2300名以上が挑戦した。

 検定には「基本コース」と「専門コース」の2種類がある。基本コースは計15問で構成。専門コースはこれと共通の15問に,より専門性の高い15問を加えた計30問から成る。

 藤江氏は,各問題の正答率を踏まえて「リスク・マネジメントの基本的な理解は得られているが,専門的な知識が必要な問題の正解率は低かった。また,リスク・マネジメントに関する組織の役割や,ERMによって実現可能なことについての理解は十分でない」と指摘した。

 特に正解率の低い問題には,例えば以下のようなものがあった。基本コース第4問,専門コース第7問の,リスク統括部署の役割を問う問題である。

(問題) リスク・マネジメントに取り組む企業では,「リスク統括」の機能を担う部署を設置することが一般的になっています。その主な役割は次のどれでしょうか。

(A)リスク情報の収集,取りまとめ,提供
(B)リスクの発生可能性や影響度を低減させる取り組み(リスクへの対応策)の実施
(C)内部監査の実施

 この問題では,回答者の多くがBと回答したが,正解はAである。これについて藤江氏は,「リスク統括部署の役割は,リスクを低減させる取り組みを実施することではなく,全社が実行する環境を整えて方向性を示すこと」と説明した。

 基本コースの受験者で正解したのは約25%で,約66%がBを選んだ。専門コースの受験者はこれより正答率が高かったが,それでも約39%にとどまり,約54%がBを選んだ。

 専門コース第4問の「ERMによって実現できるもの」に関する問題の正解率も低かった。

(問題) ERMによって実現できることは,次のどれでしょうか。

(A)全社的な資源の有効活用
(B)個別リスクへの対応
(C)業務の標準化

 正解のAを選んだのは41.5%にとどまり,約37%がBと回答した。「個別リスクへ対応し,業務を標準化するのは各部門の役割。ERMの目的は全体最適を実現することにある」と藤江氏は強調した。

 このほか正解率が50%を下回った問題には,専門コースの第2問「COSO ERMによるERMの定義」,基本コースの第14問および専門コースの第26問「リスクへの対応策」,専門コースの第10問「リスク・マネジメントに関する役割」,専門コースの第14問「リスクの識別手法」,専門コースの第22問「リスク評価の定量的手法」,専門コースの第27問「ERMツール導入で必要なもの」があった。

 藤江氏は,こうした誤解や勘違いの多かった問題について,本来の正しい考え方を説明したうえで,「企業が実際にリスク・マネジメントを運用するための知識やノウハウを習得することが不可欠」と指摘し,講演を締めくくった。


※リスク・マネジメント検定のすべての問題と解説はこちらに掲載しています。まだ受験していない方は,ぜひ挑戦してみてください。

■変更履歴
タイトルを修正しました。 [2008/08/25 10:15]