スマートフォン業界のパイオニアでありながら低迷中の米Palmは2008年8月20日(米国時間),「Treo」製品系列の最新モデル「Treo Pro」を発表した(関連記事:Palmがビジネス向けスマートフォン「Treo Pro」を発表,アンロック版も提供)。同社の「Palm OS」ベースでなく,「Windows Mobile 6.1 Professional」ベースのデバイスである。出荷開始は2008年秋。スマートフォンとしては珍しく,特定の携帯電話キャリアに縛られず使える。550ドル前後と高価なモデルだが,どこのGSMネットワークでも利用可能だ。例えば,米国では米AT&Tや米T-Mobile USAがGSM方式のサービスを提供している(欧州では,英Vodafone Groupと英O2がそれぞれ自社ネットワーク専用のTreo Proを販売する予定)。

 Palm社長兼CEOのEd Colligan氏は「企業の望みは,Windows Mobileのもたらす管理機能と経済性を,社員が快適に使い続けられる革新的かつ出来のよいハードウエアで享受すること」と述べる。「Treo Proは,『Palm』ブランドに期待する洗練された簡潔なエンド・ツー・エンドの操作感を,ハードウエア設計からパッケージング,周辺機器に至るあらゆる部分で具現化している」(Colligan氏)

 Treo Proは,スマートな黒いきょう体にGPSや無線LAN(Wi-Fi)といった最新のモバイル技術を漏れなく搭載している。高解像度のカラー画面とまともなQWERTYキーボードを備え,バッテリは取り外し可能(米Appleとは考え方が違う)。OSがWindows Mobileなので,「Exchange Server」から電子メール/電話帳/スケジュール帳をプッシュ配信でき,社員に持たせた各デバイスの集中管理も行える。「Microsoft Office Mobile」「Adobe Reader」といったアプリケーションが一通り最初から入っており,パソコン並みのWeb閲覧を実現する「Flash」などにも対応している。ノート・パソコンにつないで,高速な無線モデムとしても使える。

 企業ユーザー向けのTreo Proは,Palmが2007年に発売した一般ユーザー向けスマートフォン「Centro」と同様,多くの点で応急処置的な製品といえる(関連記事:Palm,99.99ドルのスマートフォン「Palm Centro」を発表)。いずれも共通のデザイン要素を持っている。同社は,計画からはるかに遅れたのに今も期待されている次期Palm OSを完成させておきながら,既存ユーザーのつなぎ止め策として両製品を設計した。次世代版Palm OSは,現在のところ2009年にリリースする予定だ。

 時すでに遅しだ。Palmはわずか2年前の2006年,米国スマートフォン市場で30%以上のシェアを持っていた。今では17%を切ってしまった。ライバルの市場シェアは,カナダResearch in Motion(RIM)の「Blackberry」が31%,台湾High Tech Computer(HTC)が21%ある。「iPhone」で4位につけるAppleのシェアは約12%だ。