図1:インマルサットサービスのネットワーク
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写真1:JSATの渋谷執行役員
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写真2:JSATの秋山社長
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写真3:インマルサットサービスの衛星通信端末(陸上用)
写真3:インマルサットサービスの衛星通信端末(陸上用)
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 JSATは2008年8月21日,移動体衛星通信会社の「JSAT MOBILE Communications」(JSAT MOBILE)を米Stratos Globalと共同で設立することで合意したと発表した。新会社は8月8日にJSATの全額出資で設立されており,来週には合弁会社として登記変更される予定である。新会社は,「インマルサットサービス」を中心としたStratosの移動体衛星通信サービス(MSS:Mobile Satellite Services)を手がける(図1)。Lバンド(390M~1550MHzの周波数帯域)の一部を使い,サービスを提供する。サービス開始は,2008年10月上旬の予定である。船舶会社や官公庁,メディアなどの利用を見込んでいる。

 JSATと米Stratosは,移動体衛星通信市場が2013年度に188億円になると予想しており,同年度にJSAT MOBILEの売上高を33億円にすることを目指す。8月21日の会見でJSATの渋谷恵・執行役員(写真1)は,「2009年度に本格的な営業を開始し,売り上げを増やしていく」と述べた。

 インマルサットサービスの代理店(Distributor)であるStratosはJSATとの合弁会社の設立により,サービスの提供体制を強化する。さらに2008年8月19日に打ち上げが成功した「Inmarsat-4 F3」を利用したブロードバンド(高速大容量)移動体衛星通信サービスである「インマルサットBGAN(Broadband Global Area Network)」(通信速度は492kb/s)の日本でのサービス開始に合わせて,合弁会社を通じて価格や付加サービス、アフターサポートの充実による業容拡大を目指す。

 一方,JSATは合弁会社の設立により,現在の固定向け衛星通信(KuバンドとCバンドを利用)サービスに加えて,移動体衛星通信(MSS)市場に本格参入する。「Kuバンドと Cバンドを利用したサービスに,Lバンドを使用するインマルサットサービスを加えることで,移動体衛星通信におけるワンストップサービスの提供体制を整える」(秋山政徳JSAT社長,写真2)。これにより、アジアでの事業領域を拡大するとともに,将来のグローバル移動体衛星通信事業への参入の足がかりにする。

 会見時の質疑応答では,「JSAT MOBILEがターゲットとする地域は日本かアジア全体か」という質問に対して,「まずは日本が最初のターゲットになる。ただし,何らかの事情でアジアに対してもサービスを提供しなければならない場合は積極的に行っていく」(JSATの渋谷執行役員)と回答した。さらに「競合するのはどの企業か」という質問に対しては,「現在,日本においてインマルサットサービスのほとんどを提供しているKDDIを競合相手として意識せざるを得ない」とした。なお会見場には,JSAT MOBILEが提供するインマルサットサービスの端末が展示された(写真3)。