JSATは2008年8月21日,インマルサット衛星による移動体通信サービスを提供する新会社「JSATモバイルコミュニケーションズ」(JSAT MOBILE Communications)を米ストラトス・グローバルと共同で設立すると発表した(写真1)。8月8日に新会社は登記済み。資本金は3億円,出資比率はJSATが66.7%,ストラトスが33.3%となる。
ストラトスはインマルサットの最大手ディストリビュータであり,様々な付加サービス(メール管理,帯域圧縮,ウイルス対策など)や,安定した地上ネットワーク,24時間365日のサポート体制を提供している。新会社は,そうしたストラトスのサービスを利用することで,他社のサービスに対して優位性を確保できるという。
新会社設立のきっかけの一つは,8月19日に打ち上げが成功した第4世代インマルサット衛星「Inmarsat-4 F3」(関連記事)。この衛星により,衛星ブロードバンド・サービスが日本全国で使えるようになる。F3は太平洋をカバーする衛星で,従来はインド洋をカバーするF1と大西洋をカバーするF2のみだった。
インマルサット衛星による移動体通信は,おもに船舶,官公庁,報道機関,航空で使われるが,従来の第3世代のインマルサット衛星では最大64kビット/秒の通信速度しか得られなかった。一方,第4世代のインマルサット衛星では,最大492kビット/秒の高速通信が利用できる。これには陸上用の「インマルサットBGAN」(broadband global area network)と海上用の「インマルサットFB」(fleet broadband)の2種類がある(写真2)。
これらの衛星ブロードバンド・サービスは,2009年第1四半期に開始する予定としている。当面は日本でサービスを提供していくが,将来はアジアでのサービスも視野に入れているという。
JSATの執行役員,営業本部 公共ビジネス事業部長の渋谷 恵氏は,第4世代インマルサット衛星が日本全体をカバーすることに加え,船舶通信でもブロードバンド化のニーズが増えており,インマルサット衛星の移動体通信サービスの市場は大きく伸びるとした。同社の予想によると,市場規模は現在の約50億円から2013年には約188億円にまで成長するという。そのうち,新会社は約33億円の売り上げを得ると見込んでいる。