米Intel Corp.は,サンフランシスコで開催中のIDF 2008 Fallで,Pentium Mをプロセサ・コアとして搭載する,民生機器向けのマルチメディア処理SoC「CE 3100」を発表した(ニュース・リリース)。同チップは,IDFの2日目の基調講演でEric Kim氏(senior vice president and general manager,Digital Home Group)が紹介している。
同社は,Pentium Mを搭載した,産業機器向けSoC「EP80579」を2008年7月下旬に発表しており(Tech-On!関連記事1),今回はx86(IA)コア搭載SoCの第2弾になる。なお今回のSoCは「Canmore」という開発コードを付けていたチップである(Tech-On!関連記事2)。
CE 3100には,800MHz動作のPentium Mに加えて,2本のHDストリームを流せるビデオ・デコーダ,2次元/3次元グラフィックス・プロセサ,フォーマット変換用の「ディスプレイ・プロセサ」,オーディオ処理用DSPを搭載する。さらに,3チャネルの800MHz対応DDR2メモリー・コントローラなど集積している。
CE 3100では,インターネット接続機能を備えたテレビ受像機やセットトップ・ボックスなどを狙う。すでに,米Samsung Electronics Co. Ltd.や東芝などへの出荷が決まっているという。出荷開始は2008年9月になる予定。このSoCは90nmプロセスで製造する。将来は「Atom」をプロセサ・コアにした製品も提供する計画である。
SoC事業で勝てるか
テレビ向けのSoCは,日本や欧州の半導体メーカーが手がけている。それらに勝てるのか。以前Intelは,「XScale」をプロセサ・コアに使った,民生機器向けのマルチメディア処理「CE 2110」を発売したが,成功しなかった。
今回はどうだろう。Kim氏は,「Intelがインターネット接続機器では圧倒的に強いことや,開発ツールや資産が豊富なx86アーキテクチャを採ること」(Kim氏)などを挙げて,競合のSoCより優位だとしている。
また,Intelが先端の製造プロセスを持てる数少ない半導体メーカーになっていることも,優位に働くだろう。国内半導体メーカーでは,NANDフラッシュ・メモリーを持つ東芝がSoCのプロセスで優位に立っているが,同じことはIntelにも当てはまる。
さらに東芝に比べれば半導体の事業規模が大きいこと,マイクロプロセサのチップ構造はSoCそのものであり設計などで共通の技術を適用できる,などの点で,Intelの優位性は高まる。
一方で,黙っていれば(Windowsが機能アップすれば)高性能なチップが売れていたマイクロプロセサ事業とは異なる苦労はSoC事業にはついて回る。多くのSoCメーカーが苦しむ,アプリケーションの開拓やカスタム対応などである。
Kim氏は「マイクロプロセサ事業とは異なることは理解している」と述べ,「例えば,単にチップを供給するだけではなく,サード・パーティを含めたサポート体制(エコ・システム)を構築する」とした。それは多くのSoCメーカーがやってはいるが・・・。