産婦人科、心療内科などの診療所であるパークサイド広尾レディスクリニック(東京都港区)がこのほど、診察券をICカードに切り替えた。受付に設置したカードリーダーに診察券をかざすことで自動的に受付を済ませ、電子カルテを呼び出す。窓口業務の効率化に加え、カルテ取り違えの防止を狙う。窓口で顔を合わせることによる患者のストレス軽減にもつながるという。

 ICカードには暗号化した患者番号を書き込んでおく。患者が診察券をカードリーダーにかざすと、該当する患者番号の電子カルテを自動的に呼び出す仕組みだ。同時に、患者が受付を済ませたという情報を診察室の医師のパソコン画面に表示する。ICカード・システムとして非接触ICカード技術のFeliCaを使い、1枚のカードに会員認証のほかポイント付与など複数の機能を登録できるようにしたFeliCaポケットを利用している。

 同クリニックの棚町友光事務長は診療券のICカード化について、「診療所の数は増加する一方。患者にどれだけ良質なサービスを提供できるかが、他所と差異化を図るポイントになる」と話す。患者情報の呼び出しをすべて患者番号で行うので、窓口業務にかかる時間を削減できるだけでなく、患者のカルテ取り違えがなくなるといったサービス向上につながる。ICカードには患者番号しか書き込まないので、万一診察券を紛失した場合も患者情報が流出する恐れはないとしている。

 診察券のICカード化は2008年7月から実施している。今後もICカードを生かしたサービス強化を図っていく方針だ。8月には「おサイフケータイ」への移行を始める。携帯電話を診察券の代わりに利用できる。携帯電話で診察料を支払い可能にすることも検討中という。棚町事務長は「保険外診療でポイント付与などの機能を追加し、患者に還元できる付加価値を生み出すようにしていきたい」と語る。

 加えて年内をめどに、診察室にもカードリーダーを設置する。受付と診察室でカードをかざすようにして、患者のカルテ取り違え防止策を強化するのが狙いだ。受付と診察室の2カ所にかざした時間の差から待ち時間を求め、込み具合に応じて事務員の配置を見直すとともに、待ち時間の少ない診察時間を患者に提示する計画もあるという。