インテルと内田洋行は2008年8月7日、ノートPCとネットワークを使った反復教育の実証実験を行うと発表した。対象となる公立小学校の児童に小型PCを1人1台提供し、2008年9月から半年間の実験を通して、教育システムの効果を検証する。インテルの吉田和正共同社長は「教育におけるITの有効性を示すと共に、日本におけるIT教育の普及を促進させる」と意気込む。
千葉県柏市の公立小学校、旭東小学校と手賀東小学校の4~5年生(計73人)に、ペンタブレット機能を搭載する富士通製の小型ノートPC「LOOX U」を配布する(写真1)。PCには小学館が開発したソフト「小学館デジタルドリルシステム」をインストールする。ソフトの内容は漢字と計算の練習問題。手書きによる反復学習の機能を備える(写真2)。「漢字の読み書きの能力や計算の能力を身につける上では、手書きと反復練習が効果的。すでに導入している学校からは、ソフトを使うと児童の集中力が続きやすいという声を聞いている」(小学館の伊藤護コミュニケーション編集局デジタル学習センタープロデューサー)。
手書き文字認識は富士通研究所が開発した技術を使って実現した。伊藤プロデューサーは「この技術を使えば、筆順の間違いや漢字の形の間違いをうまく認識できる」と語る。
この実験で小学生の学習効果を測定し、教育コンテンツの内容や教育手法、PCの機能や形態のあり方、ネットワークを含めたシステムの環境整備や運用方法を検証する。実証実験で使うシステムでは教師向けの成績集計機能も備える。「問題の正誤判定や結果の集計はシステム側に任せられるので、教師の負担が減らせる。実証実験の結果を、より効果的なIT教育のあり方の提案につなげていく」(内田洋行の大久保昇取締役専務執行役員教育システム事業部長)。
内田洋行は1990年代から教育分野のITソリューションを提供してきた。内田洋行の柏原孝社長は「ITは学力を支えるのに有効だが、残念ながら日本は諸外国に比べて導入が遅れている」と訴える。学校内LANの整備状況については、米や韓国ではほぼ100%の整備率だが、日本は5~6割程度にとどまるという。
OECDが世界57カ国および地域の15歳を対象に実施している「生徒の学習到達度調査」によれば、日本人学生の学習到達度は低下する傾向にある。(参考:OECD東京センターのWebサイト)。インテルと内田洋行は小中学校へのIT教育の普及を促すことで、学習能力の底上げとPCの裾野の拡大を狙う。