デジタルラジオ放送の本放送化をにらみ,「関東デジタルラジオ放送企画LLC合同会社」が発足する。TBSラジオ&コミュニケーションズ,文化放送,ニッポン放送のAMラジオ放送3社と,ベイエフエム,エフエムナックファイブ,横浜エフエム放送のFMラジオ3社が参画する。いずれも,現在デジタルラジオ推進協会(DRP)が実施するデジタルラジオの実用化放送に,1セグメント放送の形で参加している。設立申請は2008年8月5日で,出資額は600万円である。

 デジタルラジオの本放送については,総務省の「携帯端末向けマルチメディア放送サービス等の在り方に関する懇談会」が2008年7月にまとめた報告書において,現行の地上アナログ放送の終了によって空く周波数のうちVHF帯のローバンド(第1~第3の18MHz幅)を利用して実用化を図る方向が示された。報告書では,複数の地方ブロックにエリアを分割することや,ハードとソフトを分離する形態を想定している。

 LLCでは,懇談会報告書を受けて,「ISDB-Tsbの1セグメント形式」の技術を基本としたデジタルラジオ放送の実現に向けて検討を行っていく。具体的には,(1)1セグメント形式によるデジタルラジオ放送に関する調査,情報収集,研究,企画,計画立案,(2)関東以外の地域ブロックへのデジタルラジオ放送の啓蒙,普及,(3)受信機の開発,宣伝,などを事業の目的とする。

 会見の冒頭においてニッポン放送の磯原裕社長は「今後予定される制度整備にしっかりと向き合って,デジタルラジオをキチンと立ち上げていくということで,6社が足並みをそろえて連合していこうというのは大きな意思表示である。現在我々を取り巻く環境は最良の状況ではないが,ラジオという媒体の持つ可能性はまだまだ大きい。デジタルの手法を使ってその可能性をさらに拡大するという夢を持って,今回のLLCを設立した」と述べた。

<連絡協議会も設立へ>
 2008年8月6日に行われた会見では,連絡協議会の設立を予定していることも明らかにした。目的は,関東以外の地域ブロックができるだけスムーズに立ち上がることという。懇談会報告に示されたハード・ソフトの分離の方針に対しては,「本来はハード・ソフトの一致が望ましいが,一方で周波数の有効利用の点からは送信基地局が同じであることが求められる」(ニッポン放送の近衛正通常務)と,報告書の内容に理解を示した上で,「ハードとソフトと一定の関係を持たせる」という緩やかな連携を主張していく方針を示した。

 LLCが免許申請の主体の関係については,「この会社が免許を申請するかどうかも含めて,LLCの中で検討していく。ただしデジタルラジオの参入形態は,ハード・ソフトの緩やかな連携が可能なのかも含めて,まだ確定していない。こうした状況でハード事業者としてあるいはソフト事業者として申請するといったことを,今断定していえる状況ではなく,今後の制度整備の動向を見ながら対応していくことになるだろう。こうした制度整備に対応していくためのひとつの主体として活動していく」と述べた。

 今日の発表を受けて,デジタルラジオ推進協会(DRP)は,「DRPとしても歓迎する。今後LLC合同会社とも密接に連携を取り,本放送までに最大限の準備をしていく」という方針を示した(DRPの発表資料,別紙の形でLLC合同会社関連発表資料を含む)。