写真●日立製作所 中央研究所ストレージ・テクノロジー研究センタ ユニットリーダの中本一広 主任研究員
写真●日立製作所 中央研究所ストレージ・テクノロジー研究センタ ユニットリーダの中本一広 主任研究員
[画像のクリックで拡大表示]

 日立製作所と日立グローバルストレージテクノロジーズ(日立GST)は2008年7月28日、HDDの記憶容量を高める高密度記録技術を発表した。検証段階で世界最高の1平方インチ(約25mm四方)当たり610Gビットを実現。現行製品の約2.5倍まで記録密度を高めることができる。

 今回開発した技術は、現行主流である垂直磁気記録方式にアドオンするもの。記録密度を上げるための媒体と、記録・再生ヘッドの両方で新技術を開発した。

 記録媒体には、異方性磁界を膜表面平行方向に段階的に変化させたGraded媒体を採用する。高密度化を実現する一つの方法は、記録書き込みサイズの微細化だ。しかし微細化すると熱に対して不安定となり、製品として成り立たなくなる。Graded媒体は記録書き込みサイズを微細化しても熱安定性を保つことができるという。

 ヘッド部分には「Wrap Around Shield(WAS)構造」を採用。記録ヘッドの主磁極の周囲を磁気を帯びたシールドで覆うことで、記録磁界の広がりを低減する。このため記録が隣接するトラックまで及ぶことを抑えられ、情報の書き換えや消去などを防げる。

 HDD大容量化のニーズは高い。しかし、現行主流である垂直磁気記録方式ではいずれ限界が来る。当然、各社とも新しい方式の研究開発を進めているものの量産技術を含め、実用化には時間がかかりそうだ。そこで、垂直磁気記録方式の延長線上で大容量化を実現する技術を模索し、今回の発表につながったという。日立製作所 中央研究所ストレージ・テクノロジー研究センタ ユニットリーダの中本一広 主任研究員は「生産技術など開発要素が残っているため製品化の時期は未定」とするものの「2、3年後までには製品として発表したい」と語る。