写真1●「WILLCOM CORE」サービスの展開イメージ
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写真2●ウィルコムの喜久川政樹社長
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写真3●カメラ/センサー・ネットワークの利用イメージ
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写真4●カーナビゲーション・システムでの利用イメージ
写真4●カーナビゲーション・システムでの利用イメージ
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写真5●地域防犯システムでの利用イメージ
写真5●地域防犯システムでの利用イメージ
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写真6●京都大学の美濃導彦教授
写真6●京都大学の美濃導彦教授
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写真7●カメラ/センサー・ネットワーク実用化に向けての課題
写真7●カメラ/センサー・ネットワーク実用化に向けての課題
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 2008年7月28日,ウィルコムは「BWAユビキタスネットワーク研究会」の活動内容について記者説明会を開催した。これは次世代PHS「WILLCOM CORE」などの新しいネットワーク・インフラを利用したビジネスついての研究会で,同日,第1回総会が開かれたばかり。研究会の会長には,京都大学 学術情報センターのセンター長・美濃導彦教授が就任した。今のところウィルコムのほかNTTコミュニケーションズ,オムロン,京セラ,シャープ,日本無線など企業や自治体を含む25団体が参加している。

 ウィルコムでは「WILLCOM CORE」の構築に合わせて,パートナーと組んでさまざまなサービス(写真1)を提供していく。その一つとして,「WILLCOM CORE」基地局工事に合わせて,定点カメラ・ネットワーク,センサー・ネットワークを構築する予定だ。「(工事時期を合わせることで)低コストで新しいネットワーク・インフラが構築できる」(ウィルコムの喜久川政樹社長,写真2)。今後は全国16万のPHS基地局のうち,見通しの良い所や観光地などを選んでセンサーやカメラを設置する。

 センサーやカメラの用途には,地域の防犯・防災,気象情報の収集,カーナビゲーションなどを見込んでいる(写真3,写真4,写真5)。現状のWebは,主に人間が手入力したテキスト・データの情報を蓄積している。これに対してセンサー・ネットワークは,センサーが実世界を観測して得られた画像,動画などの情報を勝手に蓄積していく。京都大学の美濃教授(写真6)は「センサーを使って社会の現状を把握したいという要求がある」と見ており,このデータを解析して役立てれば,今までにない便利なサービスが構築できるのではないかという。

 一方で,こうしたネットワークを実現するためには技術的,社会的な課題が多い(写真7)。カメラに撮られる対象のプライバシーや肖像権の問題,無線で情報をやりとりする際のセキュリティ,大量のマルチメディア・コンテンツを処理する検索システム,膨大な情報の中から必要なものとそうでないものを見分ける技術,バックボーン・ネットワークの負荷の問題などだ。センサーの情報を運ぶデータ・フォーマットの規格化も課題になる。

 そこでBWAユビキタスネットワーク研究会では,「カメラ・センサネットワーク部会」という部会を設けて,こうした課題を技術面だけでなく,行政面での対応や社会的なコンセンサスの面からも研究してゆく。プライバシーなど法制度に関わる問題も多いため,牧野総合法律事務所の代表・牧野二郎氏など法律の専門家も研究会に加わる。

 「WILLCOM CORE」は2009年4月に試験サービス,2009年10月には商用サービスが開始される。それに合わせて,「2009年の夏ごろにはカメラやセンサーを使ったサービスについて何らかのテストを実施し,2011年ごろまでには実際のサービスを開始したい」(喜久川社長)。研究会ではカメラ/センサー・ネットワーク以外のテーマも扱う予定で,今後はデジタル・サイネージなどの部会の設置を検討する。また,研究会の主旨に賛同すれば,将来的に他の通信事業者が参加する可能性もある。