島根大学オープンソース・ソフトウエア研究プロジェクトの記者会見。左から島根大学法文学部 教授 野田哲夫氏,島根大学 副学長 高安克己氏,まつもとゆきひろ氏,Rubyアソシエーション 副理事長 前田修吾氏(写真提供:島根県)
島根大学オープンソース・ソフトウエア研究プロジェクトの記者会見。左から島根大学法文学部 教授 野田哲夫氏,島根大学 副学長 高安克己氏,まつもとゆきひろ氏,Rubyアソシエーション 副理事長 前田修吾氏(写真提供:島根県)
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島根大学 オープンソース・ソフトウエア研究プロジェクトの概要(島根大学の発表資料)
島根大学 オープンソース・ソフトウエア研究プロジェクトの概要(島根大学の発表資料)
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島根大学 オープンソース・ソフトウエア研究プロジェクト2008年度の推進体制(島根大学の発表資料)
島根大学 オープンソース・ソフトウエア研究プロジェクト2008年度の推進体制(島根大学の発表資料)
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 島根大学は2008年7月25日,同大学でオープンソース・ソフトウエア研究プロジェクトを開始すると発表した。世界的に普及しているオープンソースのプログラミング言語Rubyの作者であるまつもとゆきひろ氏らも参加し,技術とビジネスモデル両面での研究を行う。

 研究プロジェクトの名称は「オープンソース・ソフトウエアの安定化とビジネスモデルの構築に関する研究プロジェクト」。島根大学は2007年度と2008年度にRubyの講座を開講している。まつもと氏は島根県松江市に在住しており,同講座でも講義を行っている。松江市では「Ruby City Matsueプロジェクト」を進めており,島根県でもRuby人材育成などRubyによる産業振興を図っている。

 島根大学では「オープンソースの最新技術等の研究と情報発信を行うことで“世界から島根が見える”仕掛けを創り,研究を通じて産学官連携を推進,優れた人材を養成する」としている。期間限定のプロジェクトにとどまらず,「数年後にはオープンソース・ソフトウエアに関する研究機関を設立する」(島根大学)計画だ。

 技術面では,まつもと氏が理事長を務める「Rubyアソシエーション」で進めているRuby標準化,およびRubyの新版1.9の開発を支援する研究を行う。島根大学総合理工学部 教授 平川正人氏,同教授 縄手雅彦氏,同准教授 鈴木貢氏に加え,まつもとゆきひろ氏も島根大学 研究員に就任しプロジェクトを推進する。またRuby 1.9のエンジン部分を開発した東京大学 講師 笹田耕一氏,Rubyのコミッタである産業技術総合研究所 田中哲氏,中田伸悦氏も協力者としてプロジェクトに参加する。RubyアソシエーションやRubyコミュニティとも連携を図る。

 ビジネス面では,「オープンソース・ソフトウエアのビジネスモデルの構築」,「情報サービス産業の生産性に関する実証的・理論的研究」,「教育研究機関の果たす役割に関しての検証」の3テーマを掲げる。島根大学法文学部 教授 野田哲夫氏,同大学知的財産総括部門 教授 阿久戸敬治氏,同大学連携企画推進部門 講師 丹生晃隆氏が中心となり,京都ノートルダム女子大学 准教授 吉田智子氏,一橋大学社会学研究科 教授 Jonathan R.Lewis氏,韓国延世大学経営科学研究所 研究員 李尚黙氏,東京大学大学院経済学研究科 八田真行氏が参加。一橋大学社会学研究科,オレゴン州立大学 Open Source Lab,韓国 Yonsei Universityと連携する。

 全体を取りまとめるプロジェクト・マネージャは島根大学 教授 野田哲夫氏が務める。

 島根県知事 溝口善兵衛氏は「Rubyの信頼性向上に向けた研究や,新しいビジネスモデルの構築などを目指すこのプロジェクトは,地域の情報産業の振興を図る上で大きな力となる。島根大学から,最新技術などの研究成果を発表することで,島根が『OSSの拠点』として世界から注目される地域となるよう,関係機関との連携を一層密にして最大限の協力を行っていきたい」とのコメントを発表した。

 今後は,2008年10月に米国のオレゴン州ポートランドで開催されるGOSCON(Government Open Source Conference)に参加し,島根大学プロジェクトの研究発表報告を行う。2008年12月にはビジネスモデル研究部門のプロジェクトを中心に研究報告を兼ねたシンポジウムを開催,2009年2月に今年度のプロジェクトの研究報告を行うとしている。

 まつもとゆきひろ氏は会見で「Rubyの国際標準化などに関して,島根大学の協力が得られることに感謝したい。こういった協力関係によって,Rubyをはじめとしたオープンソース・ソフトウエアがユーザーに安心して使ってもらえるようになることを期待している」と述べた。