2008年7月25日,総務省の情報通信審議会 情報通信技術分化会の放送システム委員会の第13回会合が開催された。携帯端末向けマルチメディア放送方式の技術的条件の検討を始める方針が了承された。7月29日に予定される情報通信技術分化会へ審議の開始を報告するとともに,7月30日に作業班の第1回会合を開催する方針である。

 携帯端末向けマルチメディア放送とは,2011年7月に予定される地上アナログ放送の終了によって空く周波数のうち,VHF帯の一部を利用して実用化が見込まれているものである。2007年6月に行われた情報通信審議会の一部答申において移動体向けマルチメディア放送などに利用できるようにする方針が示されたほか,総務省の「携帯端末向けマルチメディア放送サービス等の在り方に関する懇談会」が制度の枠組みに関する報告書を2008年7月に発表している。作業班の審議は,こうした経緯を踏まえて実施するものであり,具体的には全国向けマルチメディア放送と地方ブロック向けデジタルラジオ放送が対象となる。作業班の主査には,伊丹誠・東京理科大学教授が指名された。伊丹氏の専門分野は,今回の携帯端末向けマルチメディア放送の候補となりそうな技術のほとんどが採用する変調方式であるOFDMである。

 今日の会合では,今後の審議スケジュールの確認も行われた。大枠は,まず要求条件(サービス,インターオペラビリティー,放送品質,技術方式,受信機など)の検討を進め,次に技術基準の検討を行うというものである。7月29日には要求条件に関する意見の募集を始めるとともに,7月30日に予定される第1回の作業班会合で,要求条件に関する具体的な検討を始める。8月19日に予定される第2回には要求条件についてパブリックコメントにかける案を作成し,8月22日に開催予定の放送システム委員会に報告する。その後,パブリックコメントの内容も踏まえて放送システム委員会による要求条件の承認を経て,10月~11月には技術方式の公募を行う。そのあと技術基準の検討を進め,2008年12月に作業班中間報告をまとめる。2009年5月には技術的条件の策定,そのあとパブリックコメントの募集などを行い同年7月の技術分科会への答申を目指す。

 なお今日の会合では,これまで行ってきた衛星デジタル放送の高度化に関する技術的条件に関する報告書および答申などに関する審議も行われた。これについては,示された案に対して大きな変更はなく,一部文言の修正などを行うことを前提に承認された。