米Microsoftは,発売から1年半過ぎた今もくすぶり続ける「Windows Vista」に対する誤解を晴らすため,数百万ドル規模の広告キャンペーンを計画している。このキャンペーンの目的は,米Appleによる悪名高い比較広告「I'm a Mac, I'm a PC」や,オンライン技術評論家の不勉強に端を発する不正確な情報を払拭することだ。

 広告キャンペーンのテーマは「Windows Vistaに関するうわさはすべて誤り」で,至ってシンプルである。Microsoftは批判に対する証拠も用意している。Windows Vistaのライセンス販売数が1億8000万本を超えたのだ。この膨大な販売数と最近のパソコン販売状況を合わせて考えると,2008年に新規ユーザーを獲得した勢いは,Windows Vistaの方がAppleの「Mac OS X」に比べ12倍も高いのだという。なおこの数字は,Microsoftが「Windows XP」の一般販売を打ち切った2008年6月30日以前のデータである。

 販売が好調だからWindows Vistaに存在価値がある,というわけではない。結局のところ,売れ行きのよい製品が競合製品より劣っていることがよくあるのだから。Microsoftによると,2007年の早い時期にWindows Vistaを使ったユーザーのなかには失望した人も「若干」いたが,これまでに多くの改良が施されたという。「現在,Windows Vistaの操作性は非常に優れている」(同社)

 MicrosoftはWindows Vistaにまつわる様々な誤解のうち,3つの分野に焦点を当てる。

・互換性:Windows Vistaの互換性問題について,誤解を招くレポートやブログ記事が存在する。しかし,事実は違う。現在Windows Vistaのハードウエア/ソフトウエア互換性は大変優れている。対応ハードウエアの数は発売当時の2倍に相当する7万7000種類弱あり,ソフトウエア上位100種類のうち98種類が動く。Windows Vista対応と認定されたソフトウエアは2700種類以上ある

・Windows XP:「Windows VistaはWindows XPの手直し版だから,アップグレードする価値など大してない」と主張する人が多い。確かにWindows XPは素晴らしいOSだし,Microsoftも支持が多かったことを誇りに思っている。しかし,同社はセキュリティ向上,検索機能の高速化/改善,新規/強化版デジタル・メディア・アプリケーション(「Windows Photo Gallery」「Windows Media Center」「Windows Movie Maker」),新たなプロダクティビティ・ツール(「Windows Mobility Center」「Windows Meeting Space」「Sync Center」),ペアレンタル・コントロール機能の統合,広範なパソコン/文書バックアップ機能,ハードディスク暗号化機能といったWindows Vistaの長所を挙げている。さらに,先代OSであるWindows XPと差別化できる,Windows Vista専用の豪華な新ユーザー・インタフェースも存在する

・処理速度:「同一ハードウエアだとWindows VistaはWindows XPより遅い」という内容の比較レポートに対し,Microsoftは「『Service Pack 1(SP1)』適用済みWindows VistaとWindows XPの処理速度はほぼ同等」とする独自調査の結果を示す。Windows VistaがWindows XPを上回れない例については,「Windows Vistaが攻撃に対する防御を強め,優れた検索結果につながるインデックス作成を行うなど,より多くの有益な処理を実行している」という理由を出す。また,このところ何かと気になる消費電力の面でも,Windows Vistaの電力管理機能はWindows XPより優れている。処理速度の違いは毎日使っているうちに気にならなくなるし,Windows Vistaはその程度の違いを埋め合わせて余りあるほどのメリットをもたらしてくれる

 Microsoftが展開しようとしている広告キャンペーンの中身は,まだほとんど分かっていない。同社はWindows Vistaのプロモーションに約3億ドルかけ,広まってしまった誤解を「かつて,誰もが地球は平らだと信じていたのと同じ」といった決め台詞で正し,Windows Vistaを批判する人たちに正しい情報を与えようとしている。オンラインだけでなく従来メディアも使い,大規模なキャンペーンを実施する。

 Microsoftは「早い段階で(Windows Vistaを)使ったユーザーのごく一部が失望したことは知っている」と認めた。「プリンターで印刷できず,ゲームは異常に遅くなった。ユーザーからときおり強い調子で,『最新のWindowsは,Microsoft製品に対する高い期待に必ず応えてくれると限らない』との意見をいただいた。当社の目標は,常に先代Windowsより優れた新版を作ることだ。この目標はWindows Vistaで実現できたと信じている」(同社)

 Windows Vistaの誤解が解かれて真実が広く知れ渡るか,逆にライバル・メーカーと批判派が論調を牛耳り続けるか,結果はすぐに出る。