SAPジャパンは10月、同社が進めるSOA(サービス指向アーキテクチャ)である「Enterprise SOA」に基づくシステム構築手法を説明するドキュメント「Enterprise SOA Development Handbook」を日本語化して提供する。同社はこのドキュメントを「Enterprise SOAのバイブル」と位置づけ、同手法の普及・啓蒙に役立てる考えだ。

 Enterprise SOA Development Handbookは、Enterprise SOAに基づくシステム構築の構想から計画、構築、運用にいたる作業全般の構築手法を解説したドキュメント。SAPが提供するサービスであるEnterprise Serviceの利用を前提としているが、「Enterprise Serviceの使い方だけでなく、独自のEnterprise Serviceの作り方や、既存のEnterprise Serviceの修正方法も説明している」(松本潤 グローバル・エコシステム&パートナ・グループSAP Co-Innovation Lab Tokyoディレクター)。

 同ハンドブックは100ページ以上のボリュームで、ユーザー企業やパートナー企業などEnterprise SOAにかかわるすべての関係者が対象。ビジネスプロセスプラットフォーム本部の神沢正 事業開発マネージャーは「『SOAとは何か』を説明する段階はもうすぎており、現在は具体的な実現ノウハウをみせる時期に来ている。ハンドブックでそのニーズに応える」と語る。

 Enterprise SOA Development Handbookは、Enterprise SOAによるシステム構築に必要な方法論をまとめた「Starter Kit for Enterprise SOA」のドキュメントの一つとして提供される。Starter Kit for Enterprise SOAは入門者向け解説や事例集など50種類以上のドキュメントで構成し、英語版は開発者向けWebサイトのSAP Developer Networkから無償でダウンロードできる。その中でハンドブックが特に日本企業にとって役立つと判断し、先行して日本語化した。

 同社はEnterprise SOAの普及・啓蒙策として、9月1日から新たなトレーニングコースも開始する。「業務横断的な知識を持ち、ビジネスプロセスの視点からシステムを設計できるアーキテクト」の育成を狙ったもので、ERPやミドルウエア「NetWeaver」の概要に加えて、在庫/倉庫管理、受注管理、財務会計、HCM(人材資産管理)など必要な業務を網羅する。

 「当社は数年前からビジネスプロセス・プラットフォーム(BPP)という用語を使っているが、なかなか伝わらない。プラットフォームを理解しているIT分野の要員はビジネスプロセスがわからず、逆にビジネスプロセスを理解する業務分野の要員はプラットフォームを理解していない。このギャップを埋める人材の育成が狙いだ」と神沢マネージャーは説明する。さらにコンサルティング・サービスとして、Enterprise SOAへの移行を短期間で実行するための方法論「Methodology of Accelerated Transformation to Enterprise SOA」も提供していく。