損保ジャパンのSaaS利用状況について語る、損保ジャパン・システムソリューションの柱本裕 部長
損保ジャパンのSaaS利用状況について語る、損保ジャパン・システムソリューションの柱本裕 部長
[画像のクリックで拡大表示]

 7月23日、東京・目黒で開かれた「SaaS & エンタープライズ2.0 フォーラム2008」において、損保ジャパン・システムソリューションの柱本裕・代理店システム事業部PT-Rシステム部兼ディーラー・顧客システム部長が、損保ジャパンのSaaS(Software as a Service)活用状況について講演した。

 損保ジャパンは現在、コールセンター、営業店、販売代理店など16業務で、計5320ユーザーが米セールスフォース・ドットコムの営業支援システム「Salesforce」をSaaS形態で活用している。

 同システムの利用開始は2003年度。一部の部門での試行段階を経て、2005年度にコールセンターの対応履歴管理システムとして本格導入し、ユーザー数1000人規模で利用を始めた。
 
 2007年度には「新リテールビジネスモデル革新プロジェクト」戦略の柱として、営業店や販売代理店にもシステム導入を進めた。リテール事業におけるペーパーレス化や、見積もり作業を代理店だけで完結できるようにするなど、業務改革を推進するためだ。ユーザー数は5000を超えた。さらに、顧客の住所変更や自動車買い替えなど重要な顧客情報をコールセンターから入力すると、自動的に基幹システムの情報も更新される、といったシステム連携の仕組みも同年度に構築した。

 損保ジャパン・システムソリューションの柱本部長は、SaaSを積極的に利用する理由として、主に3つを挙げた。(1)導入・展開スピードが早い、(2)システム構築の柔軟性が高い、(3)社内外の情報連携が容易---である。

 (1)の導入・展開スピードについては、新規業務向けのシステムの立ち上げ期間が、要件定義を含めてわずか3カ月で済んだ。「損保ジャパンの前身である安田火災海上の時代からIT部門に携わってきたが、これほど短期間で構築できたのは初めて」と柱本部長は語る。

 (2)の柔軟性の高さについては、操作画面などを簡単に自社向けに変更できる点を評価する。業務部門主導で設定や仕様を変更して、新たな業務管理システムを構築することもあるという。

 (3)の情報連携については、コールセンター、営業店、販売代理店の3部門が顧客情報などをやり取りしている。例えば、コールセンターが「顧客から資料請求の依頼を受けた」という情報をSalesforceに登録すると、営業店はその情報を見て契約の意向を顧客に問い合わせ、コンタクト履歴をSalesforceに登録する。あるいは、代理店から保険設計依頼をコールセンターでファクス受信すると、コールセンターで案件登録し進ちょくを管理できるようにしてから、設計結果を送り返している。

 今後の課題としては、BCP(事業継続計画)対策の強化を挙げた。2007年度にコールセンターから入力した顧客情報の変更結果を、自動的に基幹システムのデータベースに反映できるようにした結果、Salesforceにはより高い耐障害性の確保が求められている。「セールスフォース社には、システム・ダウン時の復旧支援の強化などを、これまで以上に求めていく」と要望して、柱本部長は講演を締めくくった。