SAPジャパンは2008年7月23日、売上高50~200億円の中堅中小企業向けにERP(統合基幹業務システム)パッケージの新たな導入支援サービスを提供すると発表した。財務会計、管理会計、購買/在庫、販売、生産、プロジェクト管理の各機能をハードウエア込みで「価格は3000万円から、導入期間は最低8週間と、低価格・短期導入を実現できることが特徴だ」(カスタマーイノベーションセンターの田村元バイスプレジデント)。8月から提供を開始する。

 新サービスの名称は「SAP Business All-in-One(A-One) FAST-START PROGRAM」。ERPパッケージ「SAP ERP 6.0」を事前に設定し、ハードウエアにインストールした状態で販売する。田村バイスプレジデントは「一刻も早くERPパッケージを導入して、利用しながら効果を出したい企業を狙う」と説明。「これまでのSAP製品の導入と異なるのは、導入支援コンサルタントが登場しないこと。操作マニュアルもトレーニングの担当者がいなくても済むくらい簡素化した」(田村バイスプレジデント)という。

 組み立て製造業、サービス業、商社・卸業の3業種のみをターゲットとすることで必要な機能を絞り込んだ。SAPが用意したWebサイト上で自社が必要な機能を選択すると導入価格が見積もれる「オンライン・コンフィギュレーター」を用意。実際に導入する際は、オンライン・コンフィギュレーターのデータを基に、ERPパッケージのパラメータを設定できるツールも用意した。

 SAPジャパンはすでに03年から中堅企業向けに「A-One」ブランドで、設定済みのソフトウエアや導入方法論をセットにした短期導入支援サービスを、パートナー経由を中心に提供している。07年7月にはA-Oneのメニューを一新。「会計、販売、購買、生産管理をすべて導入して1億円から」と、従来のA-Oneと比較して導入価格を引き下げていた。今回、さらに低価格のA-Oneを投入した理由について神戸利文 地域営業本部バイスプレジデントは「1億円でもまだ高いという顧客の声があったから」と説明する。

 今回のFAST-START PROGRAMが対象としている企業規模は、米国などですでに提供している中堅企業向けのSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)型ERP「SAP Business ByDesign」と重複する可能性がある。顧客層の重複について神戸バイスプレジデントは、「必ずしもBusiness ByDesignとは重ならない」と強調。その理由について、「FAST-START PROGRAMは、Business ByDesignよりは大きな規模の企業向け。加えて、自社でサーバーを持ち運用したい企業と、すべての運用を外に出すSaaSを利用したい企業は、両方とも市場に存在する」(神戸バイスプレジデント)とみる。

 SAP Business A-One FAST-START PROGRAMを提供するパートナーは「現在、交渉中。8月には7社程度を発表できる見込み」(神戸バイスプレジデント)という。これまでA-Oneを提供していなかった新規のパートナーも参入する模様だ。すでにFAST-START PROGRAMの提供を始めている米国では、米IBMや米ヒューレット・パッカードがパートナーになっている。SAPジャパンは販売開始後1年で100社への導入を目指す。