写真1●UQコミュニケーションズの田中孝司社長
写真1●UQコミュニケーションズの田中孝司社長
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写真2●モバイルWiMAXの位置付け
写真2●モバイルWiMAXの位置付け
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写真3●UQコミュニケーションズのネットワーク展開計画
写真3●UQコミュニケーションズのネットワーク展開計画
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 2008年7月23日のワイヤレスジャパン2008基調講演で,日本初のモバイルWiMAX事業者となるUQコミュニケーションズの田中孝司社長(写真1)が事業計画を明らかにした。2009年2月末に,端末・通信料とも無料の試験サービスを開始。2009年夏に商用化する。

 UQコミュニケーションズは,KDDI,インテルキャピタル,東日本旅客鉄道(JR東日本),京セラなどが出資するモバイルWiMAX事業者。モバイルWiMAXは無線LAN技術の延長にある技術で,データ通信に向く移動体通信技術である。既に韓国や北米で商用化が始まっており,欧米やアジアで電波の割り当てが進んでいる。

 HSDPAなどによる3G携帯電話網の高速化,さらにはLTE採用に携帯電話事業者が収れんする中で,田中社長はモバイルWiMAX事業者であるUQコミュニケーションズの位置付けを「3Gより一ケタ速く安価な真のモバイル・ブロードバンドを,LTEより数年早く提供できる事業者」と説明(写真2)。通信速度は「最大40Mビット/秒の通信速度でサービスを始め,次のステップで80Mビット/秒を目指す」とした。現在は商用化に向け「一般に時速120km程度と言われているローミング速度を200km超に高める技術開発に取り組んでいる」という。

MVNO事業者候補57社と協議中

 

 モバイルWiMAX普及のシナリオは,筆頭株主のKDDIやインテルなどの強みを生かした迅速なエリアおよび端末プラットフォーム展開と,さまざまなMVNO事業者への回線提供が柱となる。

 エリア展開は,KDDIが持つ基地局用地をフル活用。2009年2月末の試験サービス時で東京23区・横浜・川崎,同夏の商用サービス開始時は名古屋・大阪・京都・神戸のいわゆる東名阪エリアをカバーする。2012年度末までに,人口カバー率90%以上を達成する計画だ(写真3)。

 端末は試験サービス時こそ自社ブランドのデータ通信カードまたはモジュールを用意するが,商用サービスでは米Intelが北米で出荷済みのモバイルWiMAXモジュール搭載パソコンが尖兵となる。以降はUMPCなど対応デバイスの拡充,ゲーム機や広告配信(デジタル・サイネージ)など採用分野の広がりを見込む。

 田中社長が講演の最後に挙げたのは,UQコミュニケーションズが目指す通信事業者像に対する誤解の存在だ。「よくある誤解に『UQコミュニケーションズのブランドで端末が出てくる』というものがある。しかし免許の条件にMVNO事業者への公平な回線提供が入っており,自社ブランドの端末は試験サービスでしか出さない」と断言。「黒子に徹して日本中でモバイルWiMAXを利用できる環境の整備に注力する」とし,回線から端末まで一括提供する垂直統合モデルの通信事業者ではなく,MVNOを収益源とする水平分業モデルの事業者である点を強調。「2008年7月15日時点で57社と協議を進めている」とした。